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ドライヤーがあったので、それで髪を乾かしていると、慎也がバスルームから出てきた。
「勝手に使ってごめんなさい!」
「いや、それでいい」
髪を乾かし終えた悠からドライヤーを受け取ると、慎也は黙って使い始めた。
(怒ってるわけじゃ、ないよね)
しかし、この威圧感は何だろう。
手持無沙汰に突っ立っていると、慎也は器械を止めて言った。
「寝室へ、先に行ってろ」
「はい」
とは、言っても。寝室はどこにあるのやら。
ドアがいくつもあり、悠は迷った。
「ここは、書斎。ここは、オーディオルーム、ここは、ビューイングルーム、ここは……」
ようやく悠は、大きなベッドが置かれた部屋を見つけた。
「もう、疲れちゃったよ……」
ばふん、とベッドに倒れ込むと、今まで味わったこともない心地よさに包まれた。
「うわぁ、気持ちいい。これもきっと、高価なベッドなんだろうな」
ちょっとだけ、仮眠しよう。
あの人が来るまでの間、ちょっとだけ……。
うとうとしていた悠は、ぐっすり寝入ってしまった。
「待たせたな」
慎也が入ってきた時、悠はすでに夢の中だった。
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