第一章 案外優しいじゃん

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 ドライヤーがあったので、それで髪を乾かしていると、慎也がバスルームから出てきた。 「勝手に使ってごめんなさい!」 「いや、それでいい」  髪を乾かし終えた悠からドライヤーを受け取ると、慎也は黙って使い始めた。 (怒ってるわけじゃ、ないよね)  しかし、この威圧感は何だろう。  手持無沙汰に突っ立っていると、慎也は器械を止めて言った。 「寝室へ、先に行ってろ」 「はい」  とは、言っても。寝室はどこにあるのやら。  ドアがいくつもあり、悠は迷った。 「ここは、書斎。ここは、オーディオルーム、ここは、ビューイングルーム、ここは……」  ようやく悠は、大きなベッドが置かれた部屋を見つけた。 「もう、疲れちゃったよ……」  ばふん、とベッドに倒れ込むと、今まで味わったこともない心地よさに包まれた。 「うわぁ、気持ちいい。これもきっと、高価なベッドなんだろうな」  ちょっとだけ、仮眠しよう。  あの人が来るまでの間、ちょっとだけ……。  うとうとしていた悠は、ぐっすり寝入ってしまった。 「待たせたな」  慎也が入ってきた時、悠はすでに夢の中だった。
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