第八章 恋人です

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 どこだ、ここは。  気持ちのいい、風だ。 「ああ、ここは以前に悠と一緒に来た……」  南の島へと、慎也の心は飛んでいた。  美しい、この世の天国。  ここで私は、彼に愛され、彼を愛した。 「全ては、美しい思い出、か」  瞼を閉じようとする慎也を、無理に起こそうとする声が聞こえる。 『僕、慎也さんと一緒じゃなきゃ、ダメになっちゃった』 「ダメなのか? 私がいないと」 「うん。だから、帰って来て。南の島へは、行かないで」 「いやしかし。こうして銃で撃たれた」 「慎也さんなら、平気だよ。そんなの」  待てよ。  確かに……。  胸に衝撃を受けた時、それが致命傷になると思った。  しかしそのポケットには、悠がくれたジッポーライターがお守り代わりに入れられており、弾丸を逸らしてくれたのだ。 「悠のお守りが、本当に私の命を救ってくれたんだな」 「そうだよ。だから、ねぇ。そろそろ起きてよ」 「起きたら、目覚めのキスを頼む」 「何度でも、してあげるよ」  慎也は、蘇った。 「悠が、待ってるからな」  にやり、と苦笑いをして、復活した。
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