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慎也を撃った犯人は、警察へ自首してきた。
自分の単独行動で、決して命じられたものではない、と言い張った。
だが、誰もが思った。
慎也の弟が、やらせたことに違いない、と。
そんな弟に、慎也は自ら電話を掛けた。
「お前を許す。私はこうして、生きているんだからな」
『いや、兄貴。あれは若い者が勝手に!』
「周囲がお前をどう見ているかくらい、解るだろう。分裂した組は今、弱体化している」
『……』
「仁道会が、お前のシマを。お前を狙ってる。いや、どの組もそうだ」
『兄貴』
「私は、この地位も財力も、お前に譲ってもいいと考えてる」
『……嘘だろ』
「嘘なもんか。もう一度、組を立て直す。それしか隆誠会の生き残る道は、無いんだからな」
考えさせてくれ、と言い残し、弟は通話を切った。
結局彼は、慎也の元へ戻った。
街の少しを、ねだっただけで。
組の頭になる度胸も、街の全てを統べる度量も、彼は持ち合わせていなかったのだ。
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