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「おい」
慎也は、平手の甲で軽く悠の頬を叩いた。
起きない。
「どうするかな」
悠は、幸せそうにすやすやと眠っている。
慎也は、考えた。
①無理やり起こす。
②寝たまま、犯す。
しかし、この寝顔を見ると、そんな無体なことはできそうもない。
結局慎也は、悠をそこに寝かせたままリビングへ戻った。
そしてソファに丸めてある、悠の衣服やバッグを調べた。
何か身元の分かるものはないか、と思ったのだ。
「免許証も、保険証も、無い」
所持金は、4,632円。
服は、大型量販店のブランド。
「野良猫、か」
おおかた家出でもして、ふらふらさまよっている少年だ。
でなければ、あの歓楽街が隆誠会のシマと知らずに、商売をするはずがない。
グラスにブランデーをもう少しだけ飲んで、慎也もベッドに潜った。
「おやすみ、野良猫」
さらりと栗色の髪をかき上げてやり、そのまま眠った。
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