第九章 もう戻れない恋を愛というんだ

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「午後から、スーツを買いに行こう。実家に帰る時に、着るスーツを」 「うん」 「それから、婚約指輪も見に行こう。好きなデザインのものを、選んでいいぞ」 「うん!」  慎也は悠の薬指に、キスをした。 (組の連中に報告したら、驚かれるだろうな)  何せ、20歳も年の離れた花婿を迎えるのだ。  反対されるかもしれないが、そこは大いに権力を乱用させてもらおう。  悠は慎也の薬指に、キスをした。 (お父さんとお母さん、驚くだろうな)  何せ、ヤクザのオジサンと結婚するのだ。  反対されるかもしれないが、もうふてくされて逃げ出したりしない。  互いの薬指を絡めて、唇を重ねた。  もう、後には戻れない。  出会う前には、返れない  甘い恋は、深い愛に変わってしまったから。  どんな未来も、二人で切り開いて行ける。  無意識のうちに、キスをしていた。  誓いのキスを、交わしていた。
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