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朝、悠は自分の置かれた状況が解らなかった。
「どこ、ここ」
やけに広い、上品な部屋。
いつまででも眠っていられるような、心地よい大きなベッド。
上半身だけ起こしてぼんやりしているうちに、昨晩のことが思い出されてきた。
「……やばい」
ヤクザに身体売る約束してここに来たのに、眠っちゃったんだ!
「あの人、怒ってるかな。大丈夫かなぁ」
ぶかぶかのバスローブのまま、悠はリビングへ行った。
リビングに人は無く、キッチンから良い香りが漂ってきている。
途端に、悠のお腹は鳴った。
そっとキッチンを覗くと、そこには朝食の準備ができている。
そして、コーヒーを飲みながら新聞を読む慎也の姿が。
慎也は新聞から目を離さずに、悠に呼び掛けた。
「何をしている。料理が冷めるぞ」
「え!? あ、お、おはよう」
「おはよう」
そこでようやく慎也は新聞を置くと、悠を見た。
「よく眠れたようだな」
「うん。あの、ごめんなさい」
「いいんだ。さ、食うぞ」
「はい!」
すぐに悠は、柔らかいパンを頬張った。
気持ちの良い朝は、幸先のよさを標しているようだった。
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