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公共電波 2
「−−ほんと、シュールな動画なんだよ。最初俺、なんだこれって思ってさ。もうね、サムネから半笑い。ハハッ、でもそれが癖になるっていうか。そういう世界があって、俺はワニのムラカミさんと知り合いで、彼女と一緒に過ごしてる気になってくるんよね」
表畑は思い出して鼻で笑い、動画の良さを説明している。男は編集箇所をミスって舌打ちした。
「いやね、めっちゃおもろいってわけでないのよ。ムラカミさんって自転車乗れないんだけど、ただただ三分間ムラカミさんが自転車の練習をする映像が流れる動画があって、カメラマンにめっちゃ悪態吐くのよムラカミさん。『だいだいなんだよ着ぐるみって。ここまでこれで来たことをまずお前が褒めろよ!』ってめっちゃ口悪いのよムラカミさん。カメラマンも『お前って言うなや』って二人の相性が絶妙にギスギスしてて良い。最終的には仲良しなのが伝わってくるんだけどね。なんかジメッとした画質っていうか、雰囲気っていうか、人を選ぶかもしれないくらいシュールなんだけど。疲れた時とかずっと見てられんのよムラカミさん。良かったら皆さんも見てみてください。『ムラカミさん ワニ』で検索したら多分でてくるんじゃないかな。すいませんね、なんか。猫から程遠い話しになってしまって(スタッフの笑い声)」
男は一旦作業から離れ、動画サイトを開くと「ムラカミさん ワニ 動画」で検索を掛けた。作業が終わった後で見てみるか。
「そうそう、ついでに俺も先日SNS始めたんで、フォローお願いします。他人の宣伝してる場合じゃないのよ俺(スタッフの笑い声)では、本日はこの曲からスタート……」
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