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校長は実際、心から喜んでいた。 教育者として従来稀に見る、獣人化の遅いヒョウを指導し、獣人へと導かなければと思ってはいた。 本音は、落ちこぼれの脆弱な人間を抱えている学校として、他の学校からも色々と噂されている始末に頭を抱えていたところであった。いない存在とさえ思いたくて、人間のヒョウと会って話した事はなかった。 人間がいることで、学校対抗の球技大会でも他校に負けてしまうことは、負けず嫌いのルークからすると屈辱であった。 苦悩のタネであったヒョウが獣人となれた。やっかいな事案が一つ減ったことに気をよくし、露骨なほどの満面の笑みである。 「喜びすぎやろ」 「何を言ってるんだ。大変めでたい事だろう!人間などという脆弱な下等生物のまま生きていて、君も苦労しただろう。わたしは生徒の事は我が事のように喜びたいんだ」  ヒョウは、校長の反応を世の中の代表としてみていた。世の中とはこういうものだ。いくら自然な成長を願っているときれいごとを言っていても、内心は何でもいいから獣人に成れと思っているのだ。 「いやー良かった。素晴らしい高等部のスタートだね。頑張りたまえ」 校長とのやり取りに後味の悪さを感じつつ校長室を出た。
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