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この期に及んでのこの甘え声。ヒョウは苛立ち、手の上のチビドーベルマンを近くの大木目掛けて投げつけた。
するとチビドーベルマンは、しなやかに身体を捻らせ、大きな木の幹を蹴りあげてぶつかるのを回避し、さらに回転して綺麗に地面に着地した。間髪入れずにジャンプし、ヒョウの首を目掛けて牙を剥いてきた。
ヒョウは咄嗟に腕で庇い、チビドーベルマンはヒョウの左腕に噛み付いた状態でぶら下がった。
「何がしたいんや……」
ヒョウは若干呆れ気味に言った。噛み付いている歯は赤ちゃんの歯なので、攻撃力は皆無。特に痛いレベルでもない。
ただ、驚くべきはこの一連の攻撃センスの良さである。如何せん、赤ちゃんである事に救われたとヒョウは思った。成人の獣人なら腕は貫通していただろうし、首をやられていたかもしれない。腕にぶら下がってこちらを睨む目は血走っており、血の気の多い気質のようだ。
「おい、ええかげん離せや」
チビドーベルマンは、カパッと口を開けて腕から離れ着地した。
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