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第1話 「戦争」
人類は協力し、2つの大国を作り出した。東と西の国に分かれ、それ以外の国は存在しない。地上は戦争で砂漠や雪で覆われ、放射能で汚染されていると言われている。しかし、戦争で滅んだのではなく人類は協力を始めた。「聖純愛」と言う宗教団体が中心に町を復興させ、人々をまとめて来た。後の先祖が俺の住んでいる東の国を治めているビッグボスである。しかし、全部は上手くいかなく第二勢力が出てきて西の国を治めた。西の国の王「エゴール」。両国の違いは無いが、戦争の発端は西の国が東の国を攻撃したのが始まり。しかし、1つだけお互い協定を立てた。それは「核兵器を使用しない」事だ。その協定だけ立てて、戦争は100年続いている。戦況は進んでいない。
俺は東に住んでいるただの市民。名前は「エフェリーン」。数日後に戦場へ行かされる。1年間の兵役の義務だ。だが、前日まで仕事をする義務があり、自由に過ごせない。仕方なく職場へ向かう。俺の職場は食肉センターと言う大豆で出来た肉を作る工場で働いている。俺はここで働きたく無かったが、適性テストでここを選ばれたので変えようが無い。仕事は、大豆を潰して混ぜるだけの仕事。その後の何か入れたり肉の様にするのは俺の仕事じゃない。何のやり甲斐もない。しかし、ペースが早いから他の事を考える暇が無かった。10時に出勤し、18時まで働かされる。休憩は12時に30分だけ。足と腕がパンパンになる。休暇も存在しない。帰ると風呂とご飯で21時になり寝る前の1時間しか暇が無い。だがやる事も無い。TVは戦前のドラマの再放送。戦後、一切の新作は作られていない。ニュースはきな臭い戦争のニュースだけ。本は戦後多くが処分され、限られた内容しかない。そんな訳で俺はすぐ寝てしまう。7:30に目覚ましが鳴り、ニュースを見させられる。西の国のスパイが東の国民を殺害したらしい。「西の国は人の皮を被った動物なので見つけ次第に殺しましょう。」「これで俺もためらい無く殺せるな。」っと呟き朝飯の大豆弁当を食べた。捨てるだけだから片付けが楽だ。準備が終わり、少し時間があったので少し散歩をする事にした。俺の家はアパートで大通りにつながっている。真っ直ぐ進めば職場だが、時間があるので逆方向へ向かってみよう。
しかし、進んでも進んでもアパートばかりで他は何も見当たらない。店もない。更に進むと3mほどの壁が周りを囲っていた。大通りの真ん中に通さない様にする棒と人が立っていた。その奥には列車が止まっていた。しかし、近づくと声をかけられ「ここには用が無いだろ!さっさと来た道に戻れ!」「あの列車は何ですか?」「明日知ることになる。さっさと戻れ!報告されたいか?」明日?明日は兵役に行く日か。この列車で運ぶのか。まだ詳しい事は何も聞かされて無かった。時間も無かったので俺は職場へ向かった。
20分ほど遅刻してしまった。人生で初めての遅刻だ。遅刻が多いと国からペナルティがかされてしまう。スパイや反逆者の疑いがかけられ教育が行われてしまう。具体的には内容がわからないが帰って来ない者もいる。職場につき、放送が流れた。明日の事である。
「皆様おはようございます。昨日はゆっくり休めたでしょうか?明日は20歳の方々は兵役に行ってもらいます。7:30にいつも通りに起きてもらい、10時頃に食肉センターの反対側に進んで下さい。そこにゲートがあり、集合です。時間厳守でお願いします。また、時間通りに来ていただけないと逮捕の対象になるのでお気をつけ下さい。」っだそうだ。ついに行くのか。自分が戦争に行く。職場には様々な年齢の人がいるが、全員戦争を経験している。大丈夫、生き残れるだろう。実感が無い。朝起きて工場へ向かうだけの人生。外の世界を知らない。今まで関係の無いものだと考えて生きてきた。外の世界を知る最初で最後の機会になるかもしれない。
俺は最後の仕事を終わらせて帰宅した。帰ってもやる事が無いのでいつも通り過ごし、寝た。普通に寝れた。実感が無いのである。集合の時間になり、向かった。大勢が門に並んでいる。書類を見せているのだ。しばらくして俺の順番になりこの前の警備員がいた。書類を見せ、この前の事は何も言われないで進めた。列車に乗る。列車の中は何も無く、また大勢の缶詰だった。何時間か立たされるのか、行く場所もわからないまま列車は進んだ。
道中、実感は無かったがこれから先の事で少し不安になっていた。人生初めて乗った列車。走る音。何事も未知の事で恐怖に感じる。この不安を誰かに共有したかったが、私語は基本的に禁止されている。列車の中には監視している者はいないが、自分から声をかける勇気は出ない。しかし、周りも話したいのか何度か目があう。だが、ペナルティの事を考えると行動が出来なくなる。
列車に数時間揺られるとやっと停車した。しばらくすると扉が開けられ、外へ出た。初めての工場以外の敷地。ここも地下だが新鮮だった。敷地には大きな建物がいくつかと何も無い土地があった。俺らは建物の中の一つに移された。中はベットが並んでいるだけの広い部屋だった。自分の番号が書いてあるベットを確認し、少ない荷物を置いた。
その後、何も無い土地に集められた。その場所は運動場らしく、訓練や全体の報告の時に使うらしい。集められ、周りの兵隊の中でも服装が違う兵士が話している。「おはよう、諸君。これから1年間の兵役についてもらう。半年間は訓練に使うがそれからは実戦だ。現況、我が国は戦争状態である。この中の多くは命を落とすだろう。憎たらしい西の国の奴らに殺される事になる。エゴール。あいつが戦争を指示しなければ平和だったのだ!つまり、我が国の同胞を殺したのはエゴールあいつである!死んでいった同胞の為にも西の国を滅ぼさなければならない。その為に、諸君には命をかけて欲しい。」 ここから戦争への訓練が始まった。
半年後〜
俺はキツい訓練を半年間耐えた。そのおかげで一連の戦闘技術と武器の使い方は軽く覚えた。上手に使えるかはわからないが、使い方は一通りわかる。そして、次の日が実戦だ。何度か訓練で放射能対策の装備をし、地上に出た。地上は砂漠で熱く、何も無かった。本当に崩壊しているらしい。初めて出た時は日差しが恐ろしかったが、慣れた。実戦では問題無いだろう。当日は夜の地上で戦う。戦艦で西の大陸へ向かい、小型船で上陸する上陸作戦。上陸し、西の国のコロニーを探し出し、エゴールの確保が目標だ。実際の海は経験した事無いが、シュミレーターで経験した。後は当日の運次第だろう。 その日は緊張していたが、直ぐに眠りにつく事が出来た。
船酔いが凄い。人生で初めて船に乗ったが、思いのほか揺れる。また、小型船は棺桶の様に四角い。周りは夜なので見えない。エンジンと海の音しか聞こえなかった。ついに耐えきれなかったのか隣にいた奴が外に吐いてしまった。俺も吐こうと思った時、隣の奴が外に放り出された。乗り越え過ぎたのだろう。助けに止まると思ったが、止まらず船は進んでいった。この船は自動操縦なので途中で操作出来ない。暗闇で探せないので奴はもう助からないだろう。俺は現実を再認識した。
更に進んだ所で、爆発音が聞こえた。しかし、状況を確認する暇なく隣の船が爆散した。魚雷だ。上陸する事を西の国にバレた。無慈悲にも魚雷は周りを爆破していく。正確に当たらなかったとしても船は転覆してしまう。周りには魚雷の爆発する音、焦っている男達の声、爆破する時の悲鳴、俺はこの地獄の様な状況を祈る事しか出来なかった。しかし、運が悪く魚雷は俺の乗る船に爆破してしまった。
身体が焼ける様に熱い。実際、火傷していた。身体の負傷は火傷だけではなかった。俺は何処に居るのだろうか?死んだのだろうか?周りを見渡すとカウンターに突っ伏していたらしい。目の前には大きな棚に酒が並んでいた。「ここは‥バーか?」実際に行った事が無いが、映画で観たことがある。俺はバーのカウンターに座っている。「よお、元気?身体開いちゃってるけど?」隣には人が居た。色々と疑問があるが、今は手当てをして欲しい。「手当てを…」 「あぁ、無理無理!そんな負傷してるなら絶対助からないね。助かったとしても一生寝たきりさ。それより俺の話を聞いてくれよ!」今、余裕が無いのだが。出血もしている。少しずつ意識も遠くなっている。「俺、夢があるんだ〜。大きな夢さ。何だと思う?」どうだって良い。「しら…ない…」「ちゃんと考えてくれよ!まぁ良い。教えてやろう。話すと長くなるぞ?」そんな余裕無いのだが。苦しい。助からないなら殺してくれ。「俺…世界を崩壊させたい!」何を言っているんだ?「その為、俺を崇め奉る宗教を作らなければならない。どうだ?乗らないか?」コイツの言っている事全部わからない。「だが、俺はもうすぐ死ぬ…」 「協力するなら助けてやっても良いぜ」何だと。方法があるのか!「本当…か」 「あぁ、約束だ。どうする?乗るか?」助かる道はこれしか無い。どの道助からないのなら何でもすがってやる!「協力…するよ。す…るとも…」 「ok、マスター。あれを」何だ?一杯の酒が置かれた。「飲め」俺は吐血してしまった。飲む余裕なんて無い。「飲め、死ぬぞ」こんな物飲んで何になる!「死ぬも死なぬも自分次第だぞ。残さず全部飲め」震える手でグラスを掴む。「冥界の飲み物だ。俺達にとっては普通の酒だか生きてるお前らには刺激が強いだろうな!」グラスを持ち上げ、口に注ぐ。口から溢れながら全部を飲み干す。「良い子だ。これからよろしくな」男は笑っていた。「…」 「あ!倒れちゃったよ。そんな強烈だったか?」
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