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出会いはトラウマを連れて
世間はGW真っただ中。
空は長期休暇にも関わらず全く予定がない俺の心とは裏腹に、憎たらしいほどの快晴だ。そんな天候に腹を立てつつも、俺は今最寄りの駅前の商店街に繰り出している。
理由は単純だ。
GW明けに同僚や上司を交えて開催される〝スピーチ大会〟に備えてだ。
まぁ要するにGWに何をしていたかを報告し合う、リア充コンテストである。
所帯を持っていれば、自然と話は決まってくる。
だが、友人がそれほど多くない独身貴族にとっては、中々ハードルの高いイベントなのだ。
普段の休日であれば、『家でひたすら断捨離してましたー』などとまるで面白みのない報告をしてやり過ごしているところである。
しかし、GWのような長期休暇ともなると少し話は変わってくる。
憐みの視線を浴びるまでは許容範囲だが、こうも連日一人きりで過ごしていてはコミュニケーション能力まで疑われてしまう。
こういった印象を周りに与えることは、後々仕事にも響いて来るのだ。
第一、5連休を全て断捨離に費やしてしまえば、部屋の家具は絶滅待ったなしだ。
生憎、俺はそんな変態染みたミニマリストではない。
そうして強迫観念に駆られるようにアパートを飛び出した、まではいい。
だが、元来休日は昼間から配信映画を肴に酒を浴びている生粋の出不精だ。
目的もなく街へ繰り出したところで、特別なイベントなど起きるはずもない、と思っていたが……。
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