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目覚めると優里が応急手当をしてくれていて幸い骨折はしていなかった。
「ありがとう」
「ううん」
優里から聞かされた話は想像を超えていたが私の家に着くと真っ赤な服の女がドア前に立っており怖くなって帰ったものの以前聞いた浮気相手の話を思い出し生霊が憑いているのではないかと思ったらしい。
「霊感があるって言っても、何も出来ないから怖くて」
「だから……塩を持ってたの?」
頷いた優里は霊的なものなら効果があるだろうと清め塩を持ってきてくれたそうだけど一時的な効果しかないと言う。
私が眠っている間に優里が元カレに問いただしたという話では図らずも昨日までアヤは二軒隣に住んでいた。
そしてどういった経緯かはわからないがクッションに髪の毛を仕込んで呪いの真似事のような事をしていたのではないかと話してくれた。
知らずに元カレから貰った私は好きなキャラクターだからと別れても捨てなかっただけでアヤという女にそこまで恨まれているとは思ってもみなかったけど余程邪魔な存在だったのだろう。
「私は……今も恨まれてるの?」
「わからない。彼女から妬みや恨みが消えれば、生霊も消えるけど」
「えっ、それまで待つしかないの!?」
「うん……清め塩で一時しのぎするくらいしか……」
生霊は相手が生きているだけにお祓いや除霊というものが出来ないらしく死んでいる霊とは違い神社などでも完璧な方法はないのだと言う。
「胡散臭い霊媒師も居るけど、やめた方がいいよ」
「そっか……逆恨みされて、怖い思いして、生きた心地がしない」
「そうだよね、身勝手な恨みを飛ばされて……役に立てなくて、ごめんね」
「ううん、優里は悪くない。アヤが消えるまで、頑張る」
眉を下げて申し訳なさそうな顔をする優里に痛みを堪えて笑顔を見せたけれど強がっているだけで本当は怖い。
ただ元カレの彼女だったというだけで恨まれるなんて迷惑でしかないけどアヤという女は自分に自信がない怖がりなのだろうとも思う。
「何だか……納得いかない」
「うん……だよね」
もしかしたら明日またアヤの生霊に襲われるかもしれない恐怖がこれからも続くのなら清め塩で応戦するしかないのが現実なのだから。
「クッション、燃やそう」
「そうだね……新しいの、買ってあげるね」
ふふっとお互いに笑い合ったけれど心から笑える日は……
──まだ来ない──
ー完ー
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