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告白されて付き合っていた女がいたが、性格が合わなくて別れた、と啓介は菜摘に言った。
啓介からの電話は、だから付き合ってくれ、などというものではなく、単純に暇が増えたから話し相手に、という都合のいいものだった。
菜摘はその頃、この人は、と思う男と何度かデートを重ねていた。啓介にもその話をし、それを聞いた啓介も「よかったじゃん、俺もそういう相手に巡り会いたいわあ」と笑った。
だから、電話で他愛もないやりとりをしたり、笑いあったりすることはあっても、その先へ進もうとは考えていないはずだった。
その啓介から届いた、この手紙。
こっちが付き合ってくれ、と言って、こういう返事なら納得がいく。
お互いそんな気がないのに、わざわざそれを宣言する、ということがあるのだろうか。
そもそも、なぜ手紙、なのか。
菜摘はしばらくその不可解な数行を見つめながら、どうしたものか、と悩んだが、もともと彼女は、こういうことには白黒はっきりつけたい性格だった。
啓介に電話した。
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