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まだ弟がいなかったので、三歳になるかならないかの年齢の頃だろう。
布団の上に母と向かい合って座って、スヌーピーのぬいぐるみを投げ合って、楽しくて楽しくて、げらげら笑った。
この遊びをよくしたのか、一度しかしなかったのかはよく憶えていない。
スヌーピーの黒い鼻の部分は、毛糸をぎゅっと集めたように丸く作られていたんだけど、糸がほつれて、まるで花が咲いたみたいになっていた。
そこがポイントで、そのふわふわした鼻について、何かを言いながら、ぼんっと母の膝に投げるのだ。母も同じことを言いながら、私の膝にぽんと投げ返してくれる。
その言葉は思い出せない。
投げるたびに、二人でげらげらげらげら笑う。
この遊びのことを思い出すと、今、それが起きているかのように、あるいはついこの間のことのように、その面白さがよみがえる。
私がすごくきれいだと思っていた、母の真っ黒な長い髪。ミニスカートから出ていた膝。座っていた布団の薄いつるっとした感じ。団地の狭い一室。窓についていた鉄の手すりの匂い。そういうことも今ここにあるように感じる。
あの遊びの時から時間が過ぎて、過ぎて、過ぎて、今ここにいるのだけど。
それでも時々、母と私は、あの遊びの時を永遠に過ごしているように思う。
思い出せないあの言葉を口にする母の弾んだ声が今も聞こえる気がする。
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