ダンシング・ウイスキー

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 グラスの中で、ウイスキーが人間の形をとってダンスを始めた。  とてもリズム感がいい。  でもこれじゃ飲めないだろうと、マスターに頼んでマドラーでかき回してもらった。  ウイスキーはおとなしい液体になった。  しかしいざ飲もうとすると、ウイスキーは人間の形に戻ってピョンピョン飛び跳ねる。  困ったもんだ。  「芸を見せるから飲まないでくれよ」とウイスキーは頼んできた。  「芸によるなぁ」と俺は応えた。  ウイスキーは「タップダンスだよ」というなり見事にタップを踏み始めた。  フレッド・アステアさながらだった。とんでもなく上手い。  じっくり楽しませてもらった。  「どうだい」ウイスキーは自慢した。  「見事なもんだ」俺は拍手した。  そしてマスターに「ステアしてくれ」と頼み、液体に戻った彼を一気に飲み干した。
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