無法者の歌

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無法者の歌

21e660f5-5367-4a6a-b175-956e8b7de766  「出逢うことさえ罪になる」   あいつはいつもそう言うけれど   出逢わなくてすむ生き方なんて   どこにもないんじゃなかろうか   サヨナラがただの言葉なら   俺は淋しがり屋にならなかった   サヨナラがただの別れなら   ずっと独りでもかまわなかったさ   外はもう冬支度   俺もすぐにここを出て行く   帰るべき家から遠く離れ   迷子のまま朝陽を迎えてしまったから   しかし友よ、今は泣かないでくれ   想い出に変わるにはまだ早すぎるだろう   出逢うことさえ罪だというのなら   俺にもいつかはちゃんと天罰が下る   誰かの温もりのせいで心を潰され   垂れ流した言葉の数だけ懺悔する事だろう   泣きはらした朝に扉を開け   矛盾だらけの町へ足を突き出す   出逢った数だけ傷を受けて   別れた数だけこの身に着こんで行く   だから恋人よ、今は泣かないでくれ   忘れてしまうにはまだまだ早すぎる   決別に再会はありえないが   そんな事、望むべきではないだろうが   ゆえに俺は今ここに決別する   しかし輩よ、今はまだ笑っていてくれ   朝日の中に涙を落とすのは好まない   だから愛する人よ、今は静かに見ていてくれ   自己決着を生きる無法の道を   俺が胸を張って歩めるように
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