夢幻、ブレイク

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夢幻、ブレイク

80f16d35-6967-4e95-9ae8-66e9447aa036   赤い川の橋の上   帰らぬ人を待ち続け   今日も独り、明日も独り   行き交う人々の轍を聞いている   僕の耳は寂しがり屋の耳   誰かの呼び声に心赦せば   面影ばかりが蘇るから   何も聞こえないふりをして   ただ黙って俯いているのです   鼻の奥にこみ上げてくるのは   アナタが遺した無慈悲な言葉  「もう私に構わないで」と振り返りもせずに   僕の前から消え去っていく   そして夢、幻になって青い瞳に   あふれ出しては頬をすべり落ちるばかり   赤い川を見下ろしながら   斜めに欠けたプラチナの指輪を   放り投げてはため息ひとつ   波紋を見つめてため息ふたつ   僕のヒタイは甘えん坊のヒタイ   アナタの胸にただ顔をうずめ   明日がくるまでずっとずっと   何も見えないふりを繰り返しては   深く沈みながら寝息をたてる   唇の先に何かが触れて   乾いた心に慕情は流れ込んだ  「もう僕を見捨てないでほしい」と振り絞り   最期の本音ですがり付いた   だから夢、幻のまま崩れ落ちて   いまになってようやくの泣き笑い   いまになってハッキリと泣き笑いです   赤い川がベッドになって   ゆらゆらゆらゆらと漂っています   赤い川が僕を乗せたまま   夢幻ブレイクを繰り返すのです
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