#7 恋に落ちる真夏の夜更け

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 ドン引きされるかもしれないけど──東はそう言っていた。いったいなにをしたというのだろう。いまの話を聞いている限りじゃ、彼はその人を好きでたまらなかった。きっと、その人も。  高校を卒業して間もないふたりの姿を思い浮かべる。ふたりで経験するたくさんの初めてに胸を躍らせる姿だ。見たことも会ったこともないのに、きりっと美しいその人の顔がぼんやりと浮かんできた。  好きな人の恋の話を聞くのって、想像していたよりも辛いな。自分で聞きたいなんて言ったくせに矛盾だよね。東のことならなんでも知りたい、確かにそう思ったのに。 「浮気みたいなことを、したんだ。ほんの軽い気持ちで」  苦しそうな声と思いがけない単語に、胸が大きくざわめいた。うわき、と立ち止まったわたしを、東が申し訳なさそうな顔で見つめてくる。 「最低だよな。わかってる。そのときも、いまも」 「……だ、ね」 「おまえに嫌われたくないけど、全部話したい。最後まで聞いてくれるか?」  真剣な光を湛えた丸い目がわたしをまっすぐ捉える。繋いだ手に力をこめられて、体温がさらに上がっていく。  大好きな彼女がいながら一瞬でも他の女性に目を向けた彼の気持ちを、わたしは理解することができるのだろうか。……理解はできない、かもしれない。というか、したくない。  それでも、嫌いには、なれない。どんな一面を見たとしても、一周も二周も回った(のち)に「好き」に戻ってきてしまう。そんな気がした。
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