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──Side 隆平
「こんな言い方するのもアレですけど、見栄えはすると思います。客観的に、見た目は相当」
「知っています。会ったことがありますから」
いささか突っぱねているような口調が引っかかったが、気にしないふりをした。
梁川は、決して悪いやつではない。なにしろ、つばきと気が合うくらいだ。女性社員からの評判が悪いのは、九割方があの容姿と雰囲気のせいだろう。要するに妬まれやすいたちなのだ。
──確かに、この人が好むようなタイプではないのかもしれないな。堅実で真面目な結婚相手を探していた、ってところか?
「梁川ではご不満でしょうか」
「いえ」
被せるような即答に驚いていると、「金曜日、17時半に迎えに行くと伝えてください。ドレスコードがありますので、すべてこちらで手配します」と彼が事務的な声で続けた。
はあ、と返事をし、すっかりぬるくなって気の抜けたビールを喉に流し込む。とても、不味い。
「もう寝たほうがいいんじゃないですか。俺はショートスリーパーだから問題ないけど」
普段とは違うと感じた理由が、ここに来てようやく分かった。一人称だ。深い仲でもないこの人に多少の親近感が湧いたのは、そのせいだったのか。
「言われなくても、切ったらすぐ寝ます。……ウィスキーって、美味いですか」
「味というより薫りが好きなんです。嫌いですか?」
「薬臭くて、俺はどうも」
「そうだね、確かに似合わない。東さんは大人しくスミノフアイスでも飲んでなさい。大学生御用達の」
「バカにしてます?」
「はい、思い切り」
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