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待って、と何度口にしただろうか。そのたびに「待たないって言っただろ」と苛立ったように返され、身に纏っているものを少しずつ剥がされていく。
彼の向こうに見えるのは、星のような輝きが散らばる札幌の夜景。部屋の照明をほぼ落としたというのに、これでは意味がない。あまりにも明るい光たちが、絡み合うわたしたちを容赦なく照らしているのだから。
「つばき、綺麗」
「そんな、こと……あ、やぁっ」
「夜景のおかげで、おまえの身体が全部見える」
贅沢だな、とくびれに唇を押し当てられて腰が跳ねた。新調したばかりの下着は、初めて挑戦したベビーピンク。貧相な胸元を少しでも飾り立てようとレースがたっぷりあしらわれたものを選ぼうとしたら、「それ、男ウケ悪そう」と茉以子にばっさり切り捨てられてしまった。
迷いに迷って選んだのは、カップ部分が繊細なレースで覆われたシンプルなもの。機能性に優れており、しっかり盛れるのが特徴だ。
まあ、いくら盛ったところで脱がされてしまえば意味はないのだけど──。ブラジャーの肩紐とショーツの紐を弄ぶように引っ張られて気が気じゃない。そんなわたしの内心を読んだかのように、彼がふっと笑みを零した。
「これ、紐になってんの?解いていい?」
「だ、め……」
「俺に解いてほしくて、こんな色っぽいの着けてくれたんじゃねえの?」
そうだよな?と掠れた声で耳を擽られ、高い声が漏れ出た。
それが合図になったかのようにホックを外されてショーツの紐を解かれる。隠されていたところが露わになった羞恥で、頭がくらくらする。
「りゅ、へ……やだ、恥ずかしい」
「こんなに綺麗なのに?」
つばきの裸、やっと見れた。大きな手が優しく胸を覆う。かわいい、つばき。左耳のすぐ下を吸い上げられて、ちくっとした痛みが走った。そんなところに痕つけちゃだめ──そう言いたいのに、声になるのは甘い喘ぎばかり。
爽やかなシトラスと汗が混じった匂いに胸がときめいた。ああ、彼の「男」の匂いだ、と下腹部がじんじん疼き出す。熱いなにかが、とめどなくずくずくと溢れ出しているような。
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