#11 宵を待たぬ微熱

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「あ、……っ、や、そこ、きたない、から……」 「汚いわけないだろ。すげえ、濡れてる」  熱く痺れるそこを割られ、小さな水音が薄闇に響いた。その音が自分の秘部から発せられたかと思うと恥ずかしさが込み上げて、上半身をぎゅっとよじる。  ──この感覚、知ってる。ここを弄られるとどうなるのかも、知ってる。……だけど、その向こう側は、知らない。  丁寧に拡げられたことのあるそこは、わたし自身よりも彼を憶えているようだった。痛いくらいの疼きは治まるどころか加速して、彼の指を飲み込もうとうねり続ける。 「おまえの中……熱くて、狭いな」  異物感があったのは最初だけで、すぐに快感に変わった。不思議なものだ。つい最近まで、なにかを受け入れることなど想像もしなかったのに。  大丈夫か?と気遣ってくれる彼の目を見つめながら何度も頷く。大丈夫だから、して。そう懇願すると、彼がごくりと唾を呑んだ。 「くそ、俺がどれだけ耐えてると思って」 「い、いよ?隆平の、好きな、ときに」 「だめだ。もっと慣らさないと、気持ちよくしてやれない」  恥ずかしい水音が闇に溶けて、空気がもったりと重くなっていく。せっかくの夜景が霞んで見える。涙のせいだ。泣きたいだなんて思っていないのに、涙が勝手にせり上がってくるせい。 「つばきのこと、大切にしたいって気持ちと、めちゃくちゃにしたいって気持ちがせめぎ合ってる」  快感が遠のいて、分厚い身体に包み込まれた。好きな人と肌を擦り合わせること、そして、汗ばんだ肌と肌が触れ合うのが気持ちいいってことを、この歳で初めて知った。それを教えてくれたのは──。 「めちゃくちゃ、って、どうするの?」 「おまえが気絶するまで抱く」  右耳の下を強く吸い上げられたので、今度こそ「そんなところに、痕」と切り出した。だけど、「俺のものに印つけてなにが悪いんだよ」と子どもっぽく言い返されてしまう。 「ね、隆平」 「ん?」 「気絶は、勿体ないな。だって、せっかく隆平と一緒にいるのに」  首に腕を回し、目の前の愛しい唇に口づけた。当然、啄むだけでは終わらない。上唇をやわやわと食まれているうちに舌を絡め取られ、お互いに吐息を漏らしながら深いところで繋がり合う。  隆平と抱き合うのが好き。キスするのも好き。だからきっと、その先も好き。好きな人と触れ合う幸せを教えてくれたのが隆平で──本当に、よかった。
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