#11 宵を待たぬ微熱

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「あ、あ……っ、りゅ、へ……っ」 「かわいい、つばき。顔も声も身体も、ぜんぶ、すげえかわいい」  きもちいい?上擦った声で問われて必死で頷く。俺もきもちいい、と蕩けそうな笑顔で囁かれて、彼と繋がっている部分がきゅんきゅん疼く。  恥ずかしさを感じる余裕など、どこにもない。霞む目に映るのは、悩ましげに息を吐きながらわたしを掻き抱く隆平の姿。彼の向こうに広がる夜景も、いまはもう見えない。  ゆるやかだった腰の動きは次第に速さを増し、まだ拡がりきっていない中を突き上げるように乱される。痛みと違和感はいつしか快感に変わり、全神経がそこに集中しているのではないかと思うほどだ。 「そっち向くな。かわいく感じてる顔、ちゃんと見せろよ」  顎を掴まれて見上げると、お砂糖みたいな顔が歪んでいる。隆平、と手を伸ばすときつく抱きしめられ、「かわいい」と耳朶を齧られる。喘ぎ混じりに吐息を漏らしたらまた「かわいい」と口づけられて、息をすることさえままならない。 「やだ……かわいい、って、言い過ぎ」 「いちいちかわいいんだから仕方ないだろ」 「なにそれ、すごい殺し文句……あっ、やぁ……っ」 「おまえ、ここがいいの?さっきからすげえ締め付けてくるんだけど」  知らない、と首を振っても許してなんてもらえない。「無意識でこんなに締めてんの?やらしいな、つばきの身体」──掠れた声に火を灯され、身体が発火しそうになる。  ──()()()ときの隆平って、こんな顔するんだ。  苦しそうな、切羽詰まっているような、とてつもない快感に襲われているような、そんな顔。 可愛らしい、女の子みたい、だなんてとんでもない。低い呻き声もわたしを貫く彼自身も逞しい腕も胸筋も、全部、れっきとした「男」。初めて見る、彼の雄々しい姿。  水滴が滴り落ちて額に当たった。それが彼の汗だと分かって見上げると、何十回目かの「かわいい」を溶けそうに甘い声で囁かれる。そして、そのままの声でねだるようにこう提案された。 「身体、起こしてもいいか?俺、おまえにぎゅって抱きつかれたい」
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