#5 酔い待ちの水曜日

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「おまえ、細いから……潰さないようにしないとな」  いつもの東からは想像できないような優しい表情に、どんどん鼓動が加速していく。呼吸困難にならないように、ちゃんと息を吸わないと。 「なんだよ、その顔」 「ドキドキ、して……苦しい、の」 「これくらいで?」 「わたし、東みたいに慣れてないもん」 「俺だって、いつもはこんなに回りくどくねえよ」  スカートに入れていたはずのブラウスはいつの間にか捲れていて、汗ばんだ手が直に脇腹を撫でていく。それを感じた瞬間に我に返って、やだ、と首を横に振ってみせた。 「触られる、のは……恥ずかしい、から……」 「おまえの肌、気持ちいい」  もう片方の手は頭の下に差し入れられていて、距離を取ることなんてとてもできない。その大きな目が「逃げるなよ」と言っているように、わたしを見つめ続けている。 「固くなんて、ねえよ。ちゃんと柔らかいよ、おまえ」  もう少しだけ、触ってもいいか?耳を疑うようなセリフのせいで反射的に頷いてはっとした。東がにやりと笑って、ブラウスの中を丁寧にまさぐってくる。 「あ……っ、ひがし、だめ、恥ずかし……」 「ほんと、すべすべしてる。いい匂いするし」  今度は首筋に顔を埋められ、そこに口づける音が耳元で何度も響く。やめて、と言いたくても声にならない。背筋にぞくぞくした痺れが走って、唇まで震えてしまうから。 「ね、汗、かいてる、から……ぁっ、やめ……」 「そんな声出されてやめられるかよ」 「だ、って……がまん、しても、出ちゃ……」 「我慢するなよ。聞きたい」  東の一言一句が頭の中でぐるぐる回る。まったく消化できないうちに、唇にキスが戻ってきた。  必死にそれに応えていると、全身にピリッと電撃が走る。それと同時にお腹の下が疼いて、そこから溢れた熱いものがショーツを汚していく感触。未知の感覚にパニックになりかけたとき、東の手がどこに置かれているのかに気づいた。
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