第五夜 ~ガチャガチャ~

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 病院のベットで目を覚ました俺は、あのおみくじの内容が気になって、柿で食中毒になった事など、すっかり忘れどうでも良くなっていた。 「もうびっくりしたよ、急にうずくまって倒れちゃうんだもん。」 「心配かけてごめん。色々ありがとう。」 「どういたしまして、じゃあ今日は帰るね、お大事に。」 「ああ、ありがとう。」  よりを戻せたのは嬉しかったが、正直それどころではなかった。  あのおみくじ、当たってたな、、、。  もし、このおみくじに書いてある事が本当だとすれば、[仕事運]良縁って言うのも気になるけど、この[金運]ギャンブル運ありって、やってみる価値はあるな。    そう言えば、今月の初めに一等三億円の宝くじを10枚酔っ払った帰りに買って帰った覚えがある。もう食中毒も治ったと思うし、さっさと家に帰って当選番号を確認しよう。 「あ、当たってる、しかも一等三億円。」    まさか、あのおみくじの内容、、、本当だったなんて。どうしよう、嬉しすぎる。  それにさっき、ライバル会社からヘッドハンティングの電話が来て、給料今の三倍だすって。  これならもっとあの高級ガチャをやっておくんだった。もっと沢山大吉を引いていたらさらに良い事が起こっていたんだろうか。  いや今からでも遅くない。俺の給料は三倍になるし、何より三億円が手に入る。お金が手に入り次第行こう、ガチャガチャをやりに。  会社も辞めたし、あとはライバル会社に転職するのを待つだけ。心置きなくガチャが出来る。  まずは大吉を引いたあのガチャガチャ、全部やる。    、、、出ない、か。    もしかして一台につき、おみくじは一個だけなのかもしれない。隣の違う会社の高級ガチャもやろう、もしかしたらここにもおみくじが入っているかもしれない。  、、、無いか。  やっぱりあの会社だけが入れているのか?だったらあの会社の高級ガチャが設置してある所を調べて、出るまでやってやる。  、、、出ない。  ここも出ない。  こっちも出ない。  出ない、いくらやっても出ない。  他の会社の高級ガチャもやったけど、全部出なかった。  そんなはずはない、絶対に出る。  [金運]ギャンブル運あり 散財に注意    何てこった、気がつくと三億円はとっくに底をつき、いつの間にか闇金にまで手を出して高級ガチャをやっている。  そんな、何で出ない。 (今月の運勢)   もしかして、一台に一個じゃなくて、一ヶ月に一個なのか。  ・・・出た。    月をまたいだ途端、何事もなかったかのように、一回で。  そんな事はもうどうでも良い、金はとっくに底をついてる。早く大吉を出してお金を取り戻さなければ借金の返済が、、、。 これ以上滞ると俺の身が危ない。  大凶。  そんな、まさか、嘘だろ。  大吉が出るんだから大凶も出るかもしれないって言うのは薄々思ってはいた、だが心のどこかで俺には大吉しか出ないだろうと勝手に都合良く思っていた。 (今月の運勢) [健康運]絶不調 がんに注意 [仕事運]絶不調 倒産に注意 [金 運]絶不調 借金に注意 [人間関係]絶不調 痴情のもつれに注意 [来 月]絶不調  やめてくれ、悪い事しか書いてないじゃないか、しかも[来月]絶不調ってどう言う事だよ、今月の運勢だけじゃないのかよ。とりあえず何とか今月を乗り切れれば、またおみくじを引く事が出来るはず、それまではもう家から一歩も出ないようにしよう。    よし、今月はもう家から出ない、食料も買い込んだし規則正しい生活をしていれば、がんになったとしても来月までは何とかなるだろう。  借金取りには居留守で充分。  会社が倒産?そんなの大吉出せばどうとでもなる。  あとは、美希か、、、。  三億円が当たってからというもの、ずっと全国を回ってガチャをやっていたから、美希とは数回電話しただけで全然会っていない、でも少し会わなかっただけで痴情のもつれになんて発展するだろうか。でも来月になってまた大吉を引けば、それも無かった事に出来るはず。    それにしても、まだ四月だというのに今日はひどく暑い。 「トゥルルルルル、トゥルルルルル、」    わっ!びっくりした。    美希。  電話なら出ても大丈夫だろう。 「もしもし」 「均!大丈夫!」    大丈夫ではないけど、美希には転職することは話した、三億円の事は言ってない。もちろん大吉の事も。 「大丈夫?って何が?」 「事故とか、犯罪とか何か変なことに巻き込まれたりしてない?今、何処に居るの?」 「家に居るけど。」 「そうか、大丈夫なら良かった。」 「何の事?」 「・・・」 「・・・私、この前、均の病室から出た後やってみたの。」  やってみた?何を? 「やったって、何を?」 「・・・ガチャガチャ。・・・ランチの時、均が楽しそうにガチャガチャの話をしていたのを思い出して、何故か無性に私もやってみたい衝動に駆られちゃったの。」 「そう、なんだ。」 「そしたらね、変なのが出たの。」  変なの?まさか。 「最初、金色のカプセルが出たから大当たりだと思って凄い喜んだんだけど、開けてみたら大凶って書いてあるおみくじが入っていたの。景品にしては冗談が過ぎるなって思って、私、文句言ってやろうと思ってその会社に電話したの、そしたら、電話に出た女性の人が。」 「誰に上乗せしますか?」 「って言ってきたの。よく意味が分からなかったんだけど、私、気味が悪くて、均に、って言っちゃったの。」 「何でそんなこと。」 「だって変な冗談だと思ったし、均だったら後で言えば許してくれると思って。」  でも上乗せってどう言う事だろう、大凶より悪い運勢って聞いたこと無いけど。 「だから何とも無いって聞いて安心したんだけど、本当に何とも無いの?」 「今のところ大丈夫だと思う、強いて言えば4月なのに異様に暑いくらいかな。」 「え?何言ってるの、今日は4月にしては寒いくらいだよ。」  そうだ、そう言えばスーパーで買い込んだ帰りはパーカーを着ていた気がする。  しかも段々暑さが増してきている、というか窓の外が赤い。 「火事、、、。」 「え?何?聞こえない。」 「家が燃えてる。」  やばい!逃げなきゃ!  あれ、何で、ドアが開かない!それなら、、、窓も開かない。 「ねぇ、均のおみくじは何だったの。」 「何故、それを、、、。」  もしかして、上乗せ。 (今月の運勢) [健康運] [仕事運] [金 運] [人間関係] [来 月]こない  まさか、うそだろ、、、。 「ごめんね、均、だってもう均しか頼れる人が居なかったから。」  美希。 「本当にごめんね。」 「もう均しか上乗せ出来る人居なかったんだ。」 「また新しい人探さなきゃ。」
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