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それは思いもよらない事実だった。アプリ連携が切れれば見守り機能が解除され、ハーボのアラームはもう発動しなくなるはずだ。
「今、ハーボ持ってくるからやり方教えてくれる?」
みのりが二階にある自分の部屋に行こうとしたところで、「みのり、何やってるの? あなた夕飯の準備がまだ途中でしょう?」というお母さんの声が聞こえた。
「秀矢もみのりとしゃべってないで、塾に遅れるわよ?」
秀矢は「はーい」と返事をすると、小さな声でみのりに「塾行く前に見てやるよ」と告げた。みのりは驚いた。いつも自分の都合のいいときにしか話しかけてこない兄が、妹のためにハーボを見てくれるという。
食事を終えた秀矢が二階へ向かうのと同時に、みのりはお母さんに「ちょっと洗濯物片付けてくる」と言って二階に行った。
みのりは部屋からハーボを取ってくると、隣の秀矢の部屋のドアをノックした。「おう」という短い返事が聞こえたのでドアを開ける。秀矢は塾に行く準備中だった。
「忙しいのにごめん。これなんだけど」
みのりから手渡されたハーボを「うわ、めっちゃ懐かしい」と言いながら受け取った秀矢は、ハーボをうつぶせにすると背中に生えている羽のうち右側の羽を引き抜いた。ロボットなのに「痛そう」と思ってしまったみのりは思わず顔をそらす。
「ほら、ここにボタンがあるんだよ」
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