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第一章 ゲームの世界
ウッドゴーレムに渾身の力で剣を振り下ろす。ゲーム機の画面上に表示されているウッドゴーレムの体力ゲージがゼロになり、巨大な木材で組み立てられたロボットのような体はばらばらに崩れていった。
崩れた体は煙のように消えてなくなり、地面にはアイテムを示す光が表示されている。その光に近づくと「見張り塔の鍵を手に入れた!」という文字が現れた。
「やったー!」
剣崎みのりはタオルケットに潜り込んでゲーム機を握りしめながら大きな声を上げた。なぜタオルケットに潜り込んでいるのかといえば、ゲーム中の叫びを家族に聞かせないようにするためだ。
九月の半ばとはいえ気温はまだ高く、ゲームの興奮もあってタオルケットの中は蒸し暑かった。みのりのショートカットの髪は汗で額に貼り付いている。しかし汗ばむ体の不快感も気にならないくらい、みのりは興奮していた。
見張り塔の鍵があれば「見張り塔のゴースト退治」のミッションができるようになる。ゴースト退治の報酬としてもらえる「鋼の剣」はこの先のゲーム攻略が楽になる必須アイテムだった。
「みのり、なんなの? 今の声」
ドアの向こうからお母さんの声が聞こえた。タオルケットにはみのりが期待するような防音効果はなかったらしい。みのりは枕の下にゲーム機を隠し、タオルケットから抜け出した。急いで椅子に座り、机の上に広げてあったノートに向かう。ノートはまだ真っ白だ。
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