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ドアを開けてお母さんが入ってくる。
「あ、あの、解けなかった数学の問題が解けたからさ」
みのりが机の上に目をやると、開いているのは英語の教科書だった。慌てて数学の教科書と入れ替える。
みのりの挙動は明らかに不審だったが、お母さんは特に気にしなかったらしい。「そう。宿題が終わったんだったらお風呂に入ってね」と言い残すとお母さんは部屋を出て行った。
宿題は全然終わっていなかったが、みのりはお風呂に入ることにした。九時から大好きなゲーム実況チャンネルの生配信があるので、それまでに急いでお風呂を済まさなければならない。
『ナマハイシンマデサンジュップンデス!』
みのりの部屋に甲高い声が響く。机の上にいる小さなロボット、ハーボがしゃべった声だった。てるてる坊主のような形状で背中には小さな羽がついている。黒くて大きな目がくりくりとしていてかわいらしい。
ハーボは子ども向けに作られたコミュニケーションロボットだ。簡単なあいさつのほか、専用のスマホアプリを使えばスケジュール管理にも使える。みのりは生配信を見逃したくなくて、アラームをセットしていたのだった。
「わかったよ、ハーボ。ありがとう」
ハーボの頭を撫でるようにスイッチを押すと、ハーボが黙った。ハーボはみのりが設定した時間にスケジュールを告げただけだということはもちろんわかっているが、ハーボがみのりのために教えてくれたような気がしてついお礼を言ってしまう。
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