36人が本棚に入れています
本棚に追加
「女の子はそんなに勉強しなくていいんだから、みのりは緑中学に行きなさいね」
みのりは今ごく普通の紺色のジャンパースカートと白いブラウスを着て近所にある緑中学に通っている。秀矢の電車通学に憧れていたのに徒歩通学だ。
秀矢はひいきされている、とみのりは思う。本当はゲームで遊んでいるくせに部屋にいれば勉強していると思われる。秀矢は一日中部屋にこもっていても何も言われないのに、みのりは洗濯物畳みや食器洗いのためにしょっちゅう部屋から引っ張り出される。「勉強したいのに」と文句を言えば、「女の子は勉強ができるより家事ができたほうがいいんだから」と言われていた。
そんなことを言われていれば勉強を頑張る気もなくなる。みのりの成績はいつも下から数えたほうが早かった。将来の夢も目標も何もなかった。学校を卒業したらどこかの会社に就職して、結婚したらお母さんと同じようにスーパーのレジ打ちをしながら子育てをするのだろうとぼんやりと思っていた。
お風呂をさっさと済ませたみのりは動画の生配信を見る準備を始めた。ベッドに寝転がるとスマホに接続したイヤホンを耳に押し込む。九時ちょうどになるのと同時に生配信開始の通知がスマホに届いた。動画視聴アプリを起動すると、女の子にしては少し低い、耳慣れた声が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!