第六章 天頂の剣

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 問題は、お父さんはこの五年の間にスマホの機種変更をしてしまっているから、現在のスマホにハーボの見守りアプリが入っていない恐れがあることだ。ゲームの使用時間制限を解除できない限り、みのりはずっと一日一時間しかバトルソードの世界に入れない。今日のように早く授業が終わって部活もなく、しかも明日が休みなら思う存分ゲームをやりたい。一時間以上ゲームができたら、もしかしたら今日中にラスボスを倒せるかもしれない。  そもそもハーボはアイルを助けるためにみのりをゲームの世界に連れて行ったはずだ。それなら一日一時間の制限時間は、アイル救出にとって不利になってしまうのにどうしてアラームの発動は止められないのだろう。  みのりが皿に箸を伸ばすと、そこにはもう何もなかった。考えながら給食を食べていたら、何も味わわないまますべて食べ終えてしまっていた。 「剣崎さんって、やっぱりお腹がすいていたからぼーっとしていたの?」  隣の席の女子に笑われてしまった。  生徒たちは五時間目の授業が終わるとすぐに学校から追い出された。いつもは部活で帰りが遅いのに、こんなに早い時間に帰るなんて変な感じだなとみのりは思っていた。一斉に帰るので昇降口は生徒でごった返している。  生徒たちの列は昇降口から正門へと続いていた。みのりはそっと裏門側へまわった。裏門にはみのりと同じように人混みを嫌う生徒たちの姿がちらほら見えた。  みのりの家は裏門から出ても帰れないので、校舎をぐるりと回って正門側へ行く必要がある。正門付近の生徒が少しでも減るようにと、のろのろとした足取りで歩いた。
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