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裏門から正門へ続く道の途中には小さな児童公園がある。児童公園といっても遊具は鉄棒と砂場くらいしかないので、小さな子どもたちの姿は滅多になく、下校途中の緑中学の生徒のたまり場になっている。
公園の周囲は生垣に囲まれているため目隠しになり、三年生の先輩カップルがここで別れ話をしていたという噂も聞いたことがあった。
公園には男子生徒数名の姿があった。顔に見覚えがある。一年三組の――薬師寺駆をいじめていた奴らだ。
駆は三人の男子生徒に囲まれていた。遠目からでも仲良く遊んでいるようには見えない。みのりは生垣の陰に隠れながら、話し声が聞こえる距離まで近づいた。
「おい、なんで金持ってきてないんだよ」と坊主頭が口を尖らせる。
「今日は帰りが早いし、明日は土曜日だから俺たちは遊んで帰りたいって言ってあったよな?」とメガネを言う。
「……そんなこと言われても」
駆はどうやら金を持ってこいと言われているらしい。
「親の財布でも病院のレジでも、金はいくらでもあるんだろう? ちょっとぐらい持ってきたってわかんないから」
大山が駆の前に仁王立ちになった。駆の家は小学校近くの薬師寺クリニックだ。駆のお父さんは小学校の校医でもあったので、駆が病院の息子であることを知っている生徒は多い。
駆は鞄を抱えてしゃがみ込み、目には涙が滲んでいる。坊主頭が駆の鞄を引っ張った。駆が引っ張り返そうとすると、メガネが後ろから駆を羽交い絞めにした。駆を羽交い絞めにしたまま、坊主頭と大山が無断で鞄を開け始める。
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