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みのりはカッと顔が熱くなった。薬師寺駆がバトルソードのダッシュであると確認したことはない。もしかしたら何の関係もない他人にとんちんかんなことを言っているのかもしれない。
「あ、じゃあ私、帰るから!」
みのりはくるりと踵を返すと一目散に走りだした。
帰る時間が早かったので夕飯の準備の手伝いをさせられているところに兄の秀矢が帰ってきた。今日は塾に行く秀矢の分だけ先に用意し、食卓に並べる。
みのりはダメもとで秀矢に聞いてみることにした。
「ねえ、秀矢からもらったハーボなんだけど、ゲームの見守り機能をオフにするにはどうしたらいいの?」
味噌汁を飲んでいた秀矢はきょとんとした顔をした後に、「あー、『ゲームハイチニチイチジカン』ってやつか。あれ、未だに機能してんの? あんなの、無視して続ければいいじゃん」と言った。
現実のゲーム機で遊ぶときには、ハーボがアラームを鳴らすだけでゲーム機の電源が勝手に切られるようなことはない。今までもゲーム中にハーボがアラームを鳴らしても、無視してゲームを続けたことはある。ただ、ゲームの世界に入ってしまうと一時間で強制的に戻されてしまうので無視はできなかった。
「あれ、結構うるさいしさ」
みのりは心の中でハーボに謝りながら言った。
「親父は多分、もうハーボのアプリなんて入れてないと思うぞ」
「そうだよね。他に方法知らない?」
「んー」
秀矢は豚の生姜焼きを咀嚼しながらしばらく考えて、「確かハーボ本体にアプリ連携を切れるボタンがあったと思うぞ」と言った。
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