1.  ショッピングモールの駐車場

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 ふたりで、竜や『フーガ』や木崎のことをしゃべりながら、指示されたとおりの食事をし、市川を駅まで送り、竜を迎えに行ってから、検査結果を聞くために、また病院へと舞い戻った。  木崎曰く『夫婦としての初めての共同作業』で、内科医の検査結果の説明、というより「奥さんが旦那さんの健康管理をしっかりせねば」といった類の、このふたりにとっては大きく的外れな説教を聞き、翌日の退院許可をもらった。 「深刻な問題が見つかってたら、『共同作業』なんて呑気なこと言ってられなかったよ」  病院の廊下を歩きながら、心の緊張が解けていくのを心地よく味わった。 「そうだよな。ごめんなあ、心配かけた」  木崎の声も、膜が剥がれたように軽くなっていた。 「張り切るのもほどほどに」 「はいはい」 「はい、は1回」  しかし翌日は聖子がどうしても出社しなければならなかった。木崎はひとりでも大丈夫だと言ったが、結局また市川を頼ることになってしまった。退院を午前の遅めの時間にしてもらい、市川がタクシーで木崎を家へ連れ帰った。  聖子は上司にも部下にも頭を下げ、定時で車に飛び乗り、保育園で竜を拾って、木崎の部屋へと急いだ。
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