11.  啓子の部屋

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「でも、ヨギちゃんのことはあんまり心配してない」 「なんで」 「ヨギちゃんは、自分のしたことに後悔はしない。そういう人だよ。たとえ竜と木崎さんのためっていうボランティア精神が、多少はあったとしても、ヨギちゃんは自分の気持ちに、ちゃんとオトシマエをつけることができる人だ。たとえ、たとえだよ、失敗したと思ったとしても、自分が納得できる何かをつかむ。わたしはそう信じてる。わたしたちにできることは、もしもヨギちゃんが木崎さんと結婚したことでぼろぼろになるようなことがあったりしたら、その時にそばにいて助けてあげること。話を聞いてあげること。ヨギちゃんの味方でいてあげること。でも、だからといって木崎さんが敵になるわけではない。木崎さんが必死なんは、過労でぶっ倒れたことでもわかるやん」 「そっか……。そうだよな……。なあ、『フーガ』へ食事にいきたいな」  西澤が啓子の頬を撫でる。 「あ、今月中のディナーは予約でいっぱいだって。ランチもほとんど満席だし、商売繁盛」 「めでたし、めでたし、か。まあ、うまいもんな。当然か」 「ねえ、つーちゃん……」と、啓子が西澤の腰に手をまわした。 「なんだ」 「つーちゃん、ヨギちゃん、狙ってた……?」 「は? なんだよ、いきなり」 「ちょっとはいいと思ってたでしょ。わたしと知り合う前。別居になったあと」 「んなわけないだろお。たしかに仕事はできるし、美人ではあるけれど、俺の手に負えるような人じゃありません。その点では、俺は木崎さんを深く深く尊敬する。啓ちゃん、そんなこと考えてたのか、バカだなあ」
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