1.  ショッピングモールの駐車場

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 聖子が今の自分の気持ちをなんと呼ぶのかに思い当たったのは、さすがに今日は料理をしたくないという木崎が市川に買ってこさせたレトルトカレーで、3人の食卓を囲んでいる時だった。  疎外感。わたしひとりが部外者。  もちろん、血のつながりがあるというだけで自然発生的に強い絆が生まれるなど、聖子も無条件に信じているわけではない。だが木崎と竜はまぎれもなく親子だ。そして、自分は竜の友だちで、木崎のパートナーでいいと思っている。竜の母親になりたいと願ったことはない。  だが、そこへ木崎の入院という思いがけない事態が起こり、『妻』としての行動を求められたせいで、自分は何か大きな勘違いをしはじめてしまったのではないだろうか。それにそもそも、こんなに入籍を焦って、はたしてこれでよかったのだろうか。  後悔はしていない。そんなもの、してたまるか、と思う。聖子は心のなかで大きく首を左右に振った。これは自分が選択し、決定し、行動した結果だ。あとからうじうじ文句を垂れたって、なんの解決にもつながりやしない。聖子が木崎と籍を入れたからこそ、竜の監護権も果たせることになり、親権変更の申請ができるようになったのだ。竜がつらい境遇に陥る可能性を回避することができたのだ。めでたしめでたしじゃないか。  つまりこれはわたしの『情』の問題だ、と聖子は自分なりの結論に達した。要は距離感なのだ。自分の位置取り。部外者としてのポジショニング。
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