1.  ショッピングモールの駐車場

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 婚姻届を出したとはいえ、まだ同居はしていないし、生活時間の極端にズレた夫婦だから、お互いの健康状態のチェックなど、ほぼ不可能に近い。  しかも4月から『フーガ』の営業時間を変更するため、このところ木崎はランチメニューの開発に余念がない。したがって1月後半から、一日中フル稼働の状態が続いていた。  あらためてしげしげと観察してみれば、さすがに疲れの溜まった顔つきをしている。点滴のおかげで顔色は幾分よくはなっているのだろうが、目の下にはくっきりと隈ができ、頬も以前よりも()けているように見えた。 「病人は(いたわ)るもんだろう」という声も、いつもより張りがなく聞こえる。 「労るよ。労ってやるから、その前に、徹底的に検査してもらえ。どうせまともな健康診断なんぞ、長いこと受けてないんだろ」 「毎年やってますう、市のなんとか検診っての。ああ、メタボだ、メタボ検診」 「そんな血液とレントゲンなんてお手軽コースじゃなくて、フルコースでやってもらえっての。下剤も飲んで、腹んなかの黒いものも全部出してもらったら、きっと心優しいピュアな男に転生できるぞ」 「俺ほどピュアな男は、ヨギちゃんのまわりには見あたらないはずだ」 「あんたがピュアなら、わたしゃおとぎの国の住人だ。今、ナースステーションで言っといたから、もうすぐドクターがきてくれる。そしたらわたしからお願いするね、ずっこり調べてくださいって」 「怖いなあ、ヨギちゃん」と言いながら竜の頭を撫でる木崎は、それでも安心した微笑みを浮かべていた。
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