プロローグ

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プロローグ

 ガシャンと音を立てて、お気に入りのガラスのコップをテーブルとかしているコタツの上に乱暴に置いた。  その周りにはお酒の空き瓶、空き缶がいくつも散らばっている。 「うぃ~っ、もう飲めにゃい~」  この日、やけ酒をして酔っ払いの私は強気で、乱暴な言葉をアパートの自室でぼやいていた。  その私の近くには携帯ゲーム機が置いてある。 「なんだよ、何が最初からだよ~だったら婚約者なんかにするな! ばか王子~!」  ――王子、推しだったのに。  先ほど『花と歌、音楽が奏でる恋の道しるべ』若い子に大人気の乙女ゲームを終えた。  悪役令嬢からの意地悪を乗り切り、王子とヒロインは結ばれたのだけど……  私の心はちっとも晴れなかった。  それは王子の最後の“あの一言”で、昔のトラウマが蘇り、リアルに落ち込んでいるのだ。  『やけ酒じゃ!』と、二十歳になったばかりの私は財布を持って、コンビニ走りお酒を大量に買い、初めてのお酒を飲みまくった。  周りの人達は所詮ゲームだからというかもしれないけど、悪役令嬢のカルノはヒロインに意地悪しすぎたけど。 「王子のあの発言は酷すぎるよ~」  一気に酒をあおり、コタツの上に乱暴に置いた。   「何が最初からだよ……う、うぅ私のことが嫌いで邪魔で、いらないんなら最初から産むなよなぁ。捨てるなぁ~寂しいよ。誰か一緒にいてよ~甘えたいんだよ~抱きしめられて温もりを感じて眠りたいよぉ!」  エンディングを流しっぱなしで。  ゲーム機に文句たらたらでお酒を煽っていた。  私だって、私だってさ。 「普通の家庭が……ほ……った! ……普通のお母さんとお父さんに甘えたかった……んだよ~……、頑張ったねって頭撫でられたいんだよ! ……ん? あれっ、ゲームのエンディングの音楽こんなのだっけ? ゲームは終わったはずなのに……どうして、最初の画面に戻らないの?」  眠い目を凝らして見ると。  その画面には悪役令嬢の後日と書かれていた。  え、ええ?   何か始まるの? と、期待してスタートボタンを押すと、音楽と共に小説の様なストーリーが始まった。  内容は婚約破棄されたばかりの悪役令嬢カルノの話。  物語のカルノは婚約破棄後の国外追放でもなく。  牢屋にも入れられず。  人喰い虎が出るというリヤン森に、カルノが騎士に連れていかれてから始まった。 「お前など、人喰い虎に食われてしまえ」 「…………っ」  カルノは森をさまよい虎の獣人ルイと出会う。  最初は怖がるカルノだけど、彼は噂される様な人喰い虎ではなかった。  一緒にいるうちに二人は惹かれあい、出会ってニ年後に二人きりで結婚をして。  ルイが住んでいたログハウス風の家で、永遠に暮らしました。と物語は終わった。 「カルノ、幸せになった。もふもふ、可愛い」  もう一度エンディングが流れて最後に二人が微笑む、スチルがゲーム画面に映ったのだ。  これはもしかして全部の攻略者を攻略した者だけが見れる隠しイベントなのかもしれない。  アパートの一室で泣いた、ポロポロ私は涙を流した。  良かった、カルノほんとうに良かったね。  それを何度か見て幸せな気持ちと、私の推しがマークレ王子から獣人のルイに移っていた。 「ルイ、カルノ……おしやわへに~……」  私もいつか誰かに愛されたい。  どさっ!   一K古いアパートに暮らし。酔っ払いのわたしは幸せを噛み締めて、仰向けにコタツに寝転がり眠った。  ……それがいけなかったのだろうな。
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