第一話・最初のあいさつ

1/22
前へ
/159ページ
次へ

第一話・最初のあいさつ

第一話・最初のあいさつ  九月のある日曜日。街の大通りは通行止めになっていて、車は入ってこない。  いくつもの屋台が並んでいる。中央にある、大時計のベルが鳴った。  12時の合図だ。 ベルが鳴り終わると、たくさんの人の話し声にまじって、するどい音がひびいた。 ガチャーン! 「キャー!!」 続いて、女の人のするどい悲鳴。  誰もが、その方向を振り向いた。  男の人が倒れている。そのそばには、バラバラにわれた植木鉢が落ちていた。  あたりには、土がこぼれてちらばっている。倒れた男の人は、動かない。  まわりの人がざわめきだした。  「な、なんだ!?」 「事故か?」 「おい、救急車呼んだ方がいいんじゃないか?」  やじ馬が集まってくると、男の人が少しだけ動いた。 「大丈夫ですか?」  何人か心配そうにかけよっていく。スマホを向けて、撮影しようとする人もいる。  その近くで、ひとりの少女が不安そうな顔をしていた。 「大丈夫かな、あの男の人?」  少女は、うしろを振り返った。  だけど、話しかけた相手がいない。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加