3.始業式窓ガラス事件

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「ねぇルイくん、ルイくんって超能力にくわしいんだよね?」  次の日、私は王子に思い切って相談してみた。 「そうだね、ただ不思議なものに興味があるだけでくわしいってほどじゃないけど……あ、もしかして、サナちゃんとユナちゃんも超能力クラブに興味が!?」  目をキラキラとかがやかせる王子。 「ボクたちはクラブには興味ないよ」  ぶっきらぼうに返事をするサナ。  ユナったら、何て冷たい物言いなの。  私はあわてて弁解する。 「ごめん、私たちはただ、窓ガラスが割れた理由が気になって」  そんな私たちの会話を耳ざとく総一郎が聞きつける。 「なんだ、ついにサナも超能力クラブに入る決心がついたか」  私はぷいっと横を向いた。 「総一郎には相談してない。っていうか、入らないから!」 「なんだ。じゃあどうして王子に相談なんか」  総一郎の言葉に、思わず「ん?」となる。 「総一郎、『王子』って......」  なんで総一郎までルイくんのことを「王子」だなんて呼んでるの? 「ああ、女子たちがそう呼んでたから」  総一郎がキャーキャーさわいでるクラスの女子たちを指さす。 「キャー、王子よ!」 「王子、今日もカッコイイ♡」  どうやらルイくんをこっそり王子と呼んでたのは私だけじゃなかったみたい。 「確かにフランス王朝をほうふつとさせる名前だもんな『ルイ』って」  ウンウンとうなずく総一郎。  いや、原因は名前じゃないと思うけど。 「そんな、王子だなんて、大げさだなあ」  苦笑する王子。ああ、こんなにイケメンなのに謙虚だなんて、だれかさんと違ってカンペキ!  っていうか、そんなに王子のファンがいるんなら、その子たちをクラブに入れたらいいと思うんだけど。どうして私たちなの? 「総一郎、サナちゃんたちは、例の窓ガラス事件が気になってるみたいなんだ」  王子が総一郎に話をふるので、仕方なく総一郎も会話に入れる。 「そうなんだ。総一郎は、例の件についてどう思う?」 「ふむ。僕は、あれはだれかがPK――つまり念動力で動かして割ったのだと考えている」  総一郎が超能力の本をランドセルから取り出し、見せてくれる。 「でも、体育館の窓を割ってどうするんだ。そんな事をして、犯人には何かメリットがあるのか?」  ユナがたずねる。そうそう。不思議なのはそこ! 「もしかして、犯人は何らかのストレスを感じたのかもしれないよ」  と、これは王子。 「ストレス?」 「犯人はストレスで力を暴走させてしまったってこと?」  総一郎がうなずく。 「ああ。思春期の少年少女にはよくある現象らしい。俗に言うポルターガイストの中にも、実は超能力の暴走だったという例があるようだし」 「ポルターガイストって、誰もさわってないのに家の中のものが動いたり、音が鳴ったりするあれ?」  盛り上がる王子と総一郎。  私とユナは顔を見合わせた。  蛍ちゃんが……ストレス?  確かに、クラスがえで私たちとははなれちゃったけど、他にも友達はいるし。  一体、どうして――?  蛍ちゃんがガラスを割った犯人? ストレスで無意識に? そんな事って――。  パァン!  すると急に何かがはじける音がして、電気が消えた。 「きゃあ」 「蛍光灯が!」  天井を見上げると、教室の蛍光灯が割れて、バチバチいってる。  背筋がゾッとする。  ま、まさか――これも超能力!? 「蛍光灯が割れたのか。危ないから、はなれてたほうがいい」 「う、うん」  総一郎にうながされてその場を離れる。  見たところ、蛍光灯はちょうど人がいないところで割れたみたいで、だれにもケガは無かったみたいだけど、ガラスが散らばってて危ないったらない。 「ユナちゃん、大丈夫? 顔が真っ青だよ?」  王子が真っ青な顔をしたユナに声をかける。 「だ、大丈夫さこれくらい。バカにするな!」  王子の手をふりはらって強がるユナ。全くも~!  「ご、ごめん」  王子がすまなそうな顔をして謝る。 「ほうきとチリトリ持ってきたよ」  しっかり者の女子たちが片付けようとしゃがみこむ。総一郎はそれを止めた。 「いや、ケガをする可能性があるから、大人に片付けてもらった方がいいだろう。僕はこれから先生を呼んでくるから、君たちはここに他の人が近づかないように見張っててくれないか?」  混乱するクラスメートたちの中、総一郎はひるんだ様子もなくテキパキと指示を出す。  さすが学級委員長、イヤなやつだけど、こういう時はたよりになるかも。  教室から出ていく総一郎の後ろ姿を見送っていると、教室の入口に立っている人物に目が行く。  ――蛍ちゃん!?  そこにいたのは、顔を真っ青にして立っている蛍ちゃんだった。  蛍ちゃん――やっぱり、蛍ちゃんが犯人なの!?  走ってその場からにげようとする蛍ちゃん。 「蛍ちゃん!」  私が呼びかけると、蛍ちゃんはビクリと体をふるわせた。 「――ちょっといいかな?」  私は蛍ちゃんの細い手首をがっしりとつかんだ。
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