1.ふたごの超能力者

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「ったく」  手に力をこめる。ユナが浮かせた本や教科書がゆっくりと動き出す。 「えいっ」  私が人差し指でピンク色のランドセルを指さすと、ランドセルのフタがカパリと開く。  スポン、スポン、スポン!  心地よい音を立てて、ノートや教科書がスポスポとランドセルに入っていく。 「ええいっ」  今度は(たな)を指さす。  スパン、スパン、スパン!  雑誌やマンガが気持ちいいくらいキレイに棚に納まった。 「ふー」  よしっ、これでお片付け完了。 「おつかれ、サナ」  ユナが手をたたく。私はふん、と息をはいた。 「なんかずるくない? ユナのほうが明らかに楽じゃん」 「しょうがないじゃないか、ボクはサナみたいにコントロール効かないし、それにふつうに片付けるよりは楽だろう?」 「そうだけどさ」  確かに、手をかざすだけで片付けが終わるのは楽。一分ぐらいで終わるし。 「もっと力を使えるようになれば、もっと楽になるワン」  コロちゃんはしっぽをふると、私のベッドに勝手にねころがる。 「そうだといいけど」  私はペタリとゆかにへたりこんだ。  力を使うとどっとつかれちゃうんだよね。 「よし、もっと力を使いこなせるように努力して、一流の超能力者になるぞー!」  やる気マンマンのユナ。 「はぁ。相変わらずユナってばお子ちゃまで単純なんだから」  私がヤレヤレと首を横に振ると、ユナはムッと口をとがらせた。 「なんだよ、じゃあサナはこの能力が便利だと思わないのか?」 「そりゃあ少しは便利だと思うけど……どうせなら私はテストで良い点数が取れる能力とか、写真写りが良くなる超能力のほうが良かったなあ」  コロちゃんはあきれたように首を横に振った。 「ぜいたくだワ~ン」  悪かったね! 「それより早くお買い物行こ」  私はお気に入りのコートを羽織った。 「あっ、待てよ」  超能力でチャチャッと部屋をお片付けしちゃった私たちは、いそいそと出かける準備を始めた。  一人部屋がもらえなかったり、おたがいにくらべられたり、双子ってイヤなこともあるけど、こうやってすぐに二人で買い物に行けるところはいいところ。  友達をさそうのって時間かかるし、気を使っちゃうし。  さっそく、お気に入りの服を着て髪をとかす。ふっふっふ、春の新作トレンチコートをおろしちゃう。 「待ってワン。ぼくも行くワン」  後を追ってくるコロちゃん。 「コロちゃんはダメ。空にういておしゃべりする犬なんて見つかったら大変なんだから」  コロちゃんはふん、と鼻を鳴らした。 「しょうがないワンね」  ポンと音がする。  見ると、コロちゃんの体はヒモのついた小さい犬のヌイグルミに変化していた。 「へー、便利なんだな」 「流石は犬のオバケね」 「オバケじゃないワ~ン」  ぬいぐるみのキーホルダーになりすましたコロちゃんがガタガタとゆれる。まるでポルターガイストみたい。 「これをカバンにつけるワン」 「えっ、イヤだ。そんなきたないキーホルダーつけるなんて。ユナが付ければ?」 「ボクもイヤだよ。そんなしょぼいの」 「しつれいな双子だワン」 「じゃあジャンケンね」  ユナがイヤがるので、しぶしぶジャンケンをする。 「ジャーンケーン……」  結果はユナがチョキで、私はパー。 「仕方ないなー」  オシャレ小学生の私にふさわしくないけど、仕方ないからしぶしぶコロちゃんをカバンにつけた。のろわれたらヤだし。 「うう、ダサい」 「カバンがオシャレになったワン」  私はコロちゃんを指でちょいとはじいた。 「コロちゃんはヌイグルミなんだからしゃべらないの!」  コロちゃんをだまらせると、ソロソロと階段をおりる。  お母さんに見つかったら、また「勉強しなさい」ってガミガミ言われるんだから。 「二人とも、片付けは済んだの!? 終わったらお勉強しなさいって言ったでしょ」  お母さんがどなる。  ほら来た~! 「あとで!」  二人でハモりながら家を出た。こういう時だけ、私たちは気が合う。 「こら、待ちなさい!!」  お母さんがさけんでるけど、知らないっと。  だって、春だし、新学期だし。  好きなことしたいって、思うじゃん?
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