2.ハラハラドキドキ新学期

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 そして春休みが終わり、いよいよ新学期。 「クラスがえ、ドキドキするね」 「何組なんだろうな」  うちの学校では、一年生、三年生、五年生の三回クラスがえがあるの。  つまり今年五年生になる私たちは最後のクラスがえ。  今日のクラスがえの結果が良いか悪いかで、小学校生活が楽しく終われるかが決まる、重要な日だってわけ。  クラス割りが張り出されているのは入口のガラス戸の前。そこにはすでにちょっとした人だかりができていた。 「ちょっとごめん」  人ごみをかき分けクラス割りの前までやってくると、私たちは一組から順に自分たちの名前を探した。  あー、ハラハラする! 「みんなとはなれちゃった」  そんな声が聞こえてきて心臓がドキリとする。    そこにいたのは暗い顔をした女の子。  去年同じクラスだった(ほたる)ちゃんだ。  蛍ちゃんは、背が小さくて内気な子。すごく目立つってわけでは無いけど、よく見ると結構かわいくて、男子にもひそかに人気があったりするんだ。  そんな蛍ちゃんが、青白い顔をして今にも泣きそうになってる。何だかかわいそう。  な、なんだかお腹痛くなってきちゃった。私もみんなとはなれちゃったらどうしよう。  ドキドキしながらクラス割りを見上げる。 「(ほたる)ちゃんは何組だったの?」 「一組。五年一組。二人は五年二組だよ」  五年二組? 二人とも!?  確認すると、確かに五年二組のクラス割りには、私とユナの名前が仲良く並んでいた。  ホッとため息をつく。良かった。ユナといっしょなら、少なくとも一人ボッチにはならないね。 「二人いっしょで良かったと言えば良かったか。先生にまちがえられたりしなきゃ良いけど」  ぽつりとユナがつぶやく。  三年生の時は先生が私たちのことを取りちがえちゃって大変だったの。 「さすがにもうまちがえないよ。髪も服装もちがうし、顔も昔ほど似てないし」  小さいころからそっくりだった私たち双子は、周りの大人からまちがえられることがしょっちゅう。  昔はそっくりなことがうれしくて、わざとおたがいのフリをして入れかわったりもしてた。  だけど最近は、いちいち双子だと説明するのもめんどくさい。 「他に知ってるヤツは居るかな?」 「チナツがいるね。アヤネも」 「つぐみとアスカは三組だな」 「見て蛍ちゃん、モエやユウミも一組」  私が一組のクラス表を指さすと、蛍ちゃんは少しほっとした顔をした。 「でも二人と同じクラスが良かったな」 「となりのクラスだからすぐ会えるよ」  私たちが目を皿のようにしてクラス割りを見ていると、後から声をかけられる。 「なんだ、今年も双子と同じクラスか!」 「そ、総一郎」  ふりむくと、総一郎は人差し指でメガネをイヤミそうにおし上げた。  新学期そうそう、イヤなやつに会った! 「なあんだ、総一郎も同じクラスか」  ユナが総一郎に笑いかける。そんなヤツに構わなくてもいいってば。 「そうだな。きぐうだね」  何が「きぐうだね」よ!  「そう言えば、六年はクラスがえがないから、サナと総一郎は六年間同じクラスになるんじゃないか?」  ユナが余計なことを言う。  ちなみに私とユナは、一、二年生の時は別々のクラスだったから、六年間も総一郎といっしょなのは私だけ。  あームカつく。どうしてこうなるの!  これが「くされえん」ってヤツなのかしら? 「そ、そうね」  私が苦笑いをうかべると、総一郎はニヤリと笑った。 「なるほど。もしかして、天才の僕とアホのサナを同じクラスにすることで、学力のバランスを取ろうという先生がたの作戦かな?」 「な、何それ!」  もう、どうしてコイツはこんなにムカつくんだろう。    私、絶対にバカなんかじゃないんだから!  少なくともユナよりは成績いいし。 「ユナ、他に仲のいい子がいないか探そう」 「う、うん。じゃあな、総一郎」  ジャマな総一郎を無視して、私たちが友達の名前を探していると、お団子頭のおばさんがメガネを光らせやってきた。 「あなた達、いつまでもそんな所にたまっていないで、自分のクラスが分かったら早く教室に行きなさい!」  高センこと高畑(たかはた)先生だ。   「うわぁ、相変わらずこわい」 「だな。高センが担任じゃなくて本当に良かったよ」  私たちはクラス割りの紙をチラリと見た。高センは三組だ。 「そう言えば、うちのクラスの担任はだれなんだろーな」 「えーっと……前野(まえの)先生かぁ。聞いたことない名前だね」 「今年新しく来る先生じゃないかな。男の先生って初めてだね。こわい先生じゃなきゃいいけど」  二人で話をしながら新しい教室へと向かう。  どうやら机の上に名前が書いてあってその通りに座ればいいみたい。 「さて私の席は」  これって出席番号順なのかな?  私がキョロキョロとしていると、総一郎が目の前の机を指さした。 「二人の席はここだ」 「ま、まさか総一郎のとなり!?」  おそるおそる机を見ると、確かに総一郎のとなりの席に私の名前が書かれている。 「そっか。僕ボクらの苗字が白都(しらと)で総一郎が志之原(しのはら)だから近くなのか」  納得した表情で私の後ろの席に座るユナ  そう言われてみれば、去年も一昨年も近くの席だった気がするけど――チラリととなりを見ると、総一郎は腹のたつ顔をしてニヤニヤ笑っていた。 「おや、僕のとなりはサナか。宿題を忘れても見せてやらないのでそのつもりで」  ム、ムカつく! 「ユナ、交わって」  思わずユナにつめよる。 「え、だって出席番号順だし、『さな』と『ゆな』だと『さな』のほうが先だし」 「バレないバレない。同じ顔なんだし」 「いや、バレバレだぞ。アホ面してるのがサナ」  総一郎がやれやれと首をふる。  はぁ!? な、何なのよこいつ!  もうやだ。こんなヤツととなりの席だなんて!
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