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3.始業式窓ガラス事件
「それでは、始業式に向かいます。みなさん出席番号順に廊下に並んでください」
前の先生が指示を出す。
出席番号順ってことは、また総一郎ととなり同士かあ。ため息をつきながら廊下に向かう。
チラリと総一郎の方を見ると、例の王子、ルイくんと親しげに話してる。オカルト好き同士、話が合うのかな。
ルイくん、イケメンなのにずいぶん変わった男の子みたい。
「始業式、かったるいなぁ」
ユナがのびをする。
「でも授業が無いからラッキーじゃない」
「まぁな」
「前野先生、イケメンだよね。私、ファンになりそう」
青い目の王子様・ルイくんもかっこいいけど、やっぱり私は前野先生。大人の男の人ってステキ。
ぽーっとする私を見て、ユナは苦笑いした。
「イケメンとかそういうのはともかく、優しそうな先生で良かったよ」
なんでよ、イケメンかどうかは一番大切な項目なのに。
体育館に着くと、一年生から四年生までが体育館の前の方に座り、五、六年生は後ろの方に座る。
「後ろの方になると、高学年って感じがするね」
「そうだな。後ろの方で少し見にくいけど」
「見て。一年生、小さくて可愛い」
「それにしても、今の一年って人数が少ないんだな。二クラスしかないなんて」
「二年生もだよ。私たちは三クラスあるのに」
そんな話をしていると総一郎が勝手に口をはさんでくる。
「少子化が進んでいるんだ。ゆゆしき事態だよ。政府は何か抜本的な改革をしなくては」
小学生のくせに政治家にでもなる気?
ムカムカしながら総一郎を見上げる。
「おや、君、少し縮んだんじゃないかね? それしか身長無かったか?」
ニヤニヤしながら総一郎が言う。
「うるさい。あんたが大きくなったんでしょ」
去年までは私の方が背が高かったのに、総一郎ったら今年になっていきなり大きくなって。腹が立つ!
「君たち、仲がいいんだね」
ほほえむ王子様。
「え、いや、そんなに仲良しというわけではないんだけど、ただ私たち、家も近いし、五年間同じクラスで」
「そうなんだ。うらやましいね、こんなに可愛い子たちと仲良しだなんて」
王子ったら、リップサービスが上手なんだから。ま、私が可愛いのは本当のことだけど。
「そうか? よく見るとそんなでもないぞ」
総一郎はチラリと私の顔を見る。し、失礼なヤツ!
「いやいや。しかも双子だなんてすごいなぁ」
王子が目をキラキラと輝かせる。
「ねぇ君たち、双子同士でテレパシーとか使えたりしないの? よく聞くじゃない、双子って、片方が危険な目にあっていると、もう片方が虫の知らせで分かるだとか」
テレパシーじゃなくて、物をうかせる力なら使えるんだけど。そう言いかけて口をつぐむ。
超能力を使えることは他の人にはナイショにするようにって、コロちゃんにも言われてるんだった。あぶない、あぶない。
「え、えっと、今のところ無いかな」
「そうだね。何となくお互いの考えてることは分かるけど。サナは考えてる事が顔に出やすいから」
「ユナもでしょ」
「へぇ、そうなんだ」
王子が身を乗り出す。
キラキラかがやく青い瞳に、思わず見とれていると――。
ガッシャーーン!!
とつぜん大きな音があたりをつつんだ。
「きゃあああっ!」
「な、何!?」
ザワザワと辺りがさわがしくなる。
混乱につつまれる体育館。
「どうやら窓が割れたようだな」
総一郎が冷静に言う。
見ると、確かに体育館の窓が割れてる。それも二枚も。
床にガラスが散らばってて見るからに危ない。
ええっ、どうして!?
「鳥でもぶつかったのかな」
「だれかがバットでもふり回したんじゃない?」
「ヤダ、こわい」
みんな口々にウワサをしてるし、窓の周りには見る見るうちに人だかりができる。
「みんな野次馬根性がすごいなぁ」
総一郎がヤレヤレと首をふる。
「見たからって、どうにかなるわけじゃないのにね」
と、これは王子。
「そ、そうだよね。こんなことでさわぐなんて子供っぽい」
私は見に行きかけた足を止め、あわてて苦笑いをした。
「みなさん静かに。自分の場所にもどりなさい!」
あわてて野次馬たちを追いはらう先生。
先生の話によると、どうやら強い風で窓ガラスが割れたみたい。
やだやだ、ボロい学校。
ゲガ人は一人もいないみたいで一安心だけど、冷たい風がピューピューとふきぬける。
四月とはいえ、外はまだ肌寒くて、うでにポツポツとトリハダが立つ。
新学期だからオシャレしようと思って、ちょっと薄着しすぎたかも。
「ひぃー、寒っ」
私がガタガタふるえていると、王子が私の肩にカーディガンをかけてくれる。
「大丈夫? これを使うといいよ」
「あ、ありがと。王子……じゃなくてルイくんは寒くないの?」
「ぼくは平気。こう見えても結構厚着してるから」
にっこりとほほえむ王子。なんて紳士なんだろう!
ありがたく王子のカーディガンを着ることにする。ホッコリとあたたかい。
周りの女子たちの視線が痛いけど……うう。
やがて先生が板で窓をふさぎ、始業式は予定道り始まった。
私は後ろをふり返り王子の顔をチラリと見た。
何やら眉間にシワを寄せて考えこんでたけど、目が合うとニッコリとほほ笑んでくれる。
カッコイイし、何だかすごくいい人。知り合えて良かった。
やがて始業式が終わり、みんなでクラスにもどる。
王子をチラリとみると、なぜか総一郎に熱心に話しかけてる。
「総一郎くんはどう思う?」
「どう……とは?」
「さっきの窓ガラスだよ。変だと思わなかった?」
「うーん、確かに、先生が言うほど風がふいていたとは思わないが」
「ぼくはあれ、超能力者のしわざじゃないかって思うんだ」
目をキラキラとかがやかせる王子。
私はブッとふきだしそうになった。
あの窓ガラスが超能力者のしわざ?
***
「……っていう訳なんだけど、超能力者のしわざだと思う?」
家に帰ると、コロちゃんにたずねる。
「僕は現場を見ていないからよく分からないワン」
首をカイカイしながら答えるコロちゃん。
全く、緊張感が無いったら。
「でも、超能力はだれにでも目覚める可能性があるワン」
「そう」
確かに、総一郎もあの彗星が来てから超能力が目覚める子供たちが増えたって言ってたっけ。
もしかして、学校に私たち以外にも超能力者がいるってこと? 一体だれが?
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