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「さて、すでに学校外でスポ小に入ってる人もいるかと思いますが、この学校では、五年生から放課後に学校でクラブ活動をすることができます」
帰りの会。前野先生がみんなにプリントを配って説明する。
「クラブに入りたい人や新しくクラブを立ち上げたい人はこの紙に書いて出してください」
クラブ活動かあ。
「めんどくさーい」
「ボクも。スポ少に入ってるし」
ユナと二人でクラブ活動について話していると、王子が声をかけてきた。
「二人とも『PSI研究会』に入らない?」
「ぴ、ぴーえすあい??」
私とユナが首をかしげていると、総一郎が口をはさんでくる。
「平たく言えば超能力だな。神通力や透視といったESP能力と、念動力などのPK、この二つを合わせてPSIと言うのが......」
あーもう、ワケ分からない。
っていうか、まさか総一郎も一緒なの!?
「悪いけど、私、いそがしいから」
ぷいと横を向く私に、総一郎はやれやれと首をふる。
「何言ってるんだ。ユナみたくスポ少にはいってるわけでもないし、委員会もやってない、ヒマ人だろ」
ヒマ人だなんて失礼な!
「私だって、雑誌やモデルの研究をしたり、オーディション受けたりするし、他にも……ほら、買い物とか買い食いとかいそがしいの!」
王子がニコリと笑う。
「へぇ、オーディション。すごいなあ」
「オホホ。まぁそんな、大したこと無くってよ!」
「本当に大したことないからな。前にドラマに出たって言ってたときもエキストラだったし」
イヤミったらしく総一郎が言ってくる。
「失礼な!」
「本当のことだろう」
あ~、何でこんなに総一郎はムカつくんだろう。王子はこんなに優しいのに!
「とにかく私、そんなクラブには入らないからね!」
「そっかあ」
王子が困った顔をする。
「クラブを作るには、メンバーが五人必要なんだ。他にだれか居ないかな」
「うーん」
王子のうるうる攻撃。私は辺りを見回した。
「あっ、アヤネ、チナツ!」
仲の良い女子二人に声をかける。
「二人とも、PSI研究会に入らない?」
「ぴー……何それ」
二人は顔を見合わせる。
「超能力を研究するんだ。『超能力クラブ』と言ったほうが分かりやすいかな」
総一郎が口をはさむ。
二人は苦笑いした。
「悪いけど、私たちブラスバンド部に入るから」
「そうか」
ガックリと肩を落とす総一郎。
「じゃあ私はこれで」
「じゃあな」
そのすきに、私とユナはにげるようにして教室を出た。
全く、超能力クラブだなんて、ジョーダンじゃない!
「おーい、ユナ、サナ!」
帰り道、私たちをよぶ声にふり返る。
「コロちゃん!?」
道で細長い草をむしゃむしゃしてる犬――コロちゃんに私たちはビックリして飛びのいてしまう。
「何でこんなところに!?」
「家でずっと待ってるのもたいくつワン。それに、他にも超能力者がいると聞いたから探しに来たワン」
「だれかに見つかったらどうするの」
「ぼくの姿は二人にしか見えないワン」
そ、そっか。そう言えばそうだったわね。
コロちゃんをだき上げ、三人で公園に向かう。
ベンチの前まで来た所で、コロちゃんが耳をピクリと動かした。
「どうしたの?」
「いや、何だか犬の気配が」
ブルリとふるえるコロちゃん。
すると声が聞こえた。
「サナちゃーん、ユナちゃーん」
走ってきたのは、今朝クラス表のところでいっしょだった蛍ちゃんだ。
「蛍ちゃん!」
「蛍ちゃん、どうしたの?」
「私、マロンちゃんの散歩に」
蛍ちゃんがクリーム色をしたトイプードルを指さす。
「二人も散歩?」
「ああ、うん、まあ」
「そうなんだ。二人も犬を飼ってるだなんて、知らなかった」
コロちゃんを指さす蛍ちゃん。
「え?」
私は思わず身を乗り出した。
ユナも目を見開く。
「ほっ、蛍ちゃん、この犬――コロちゃんが見えるのか?」
「え? 何言ってるのユナちゃん。この茶色いワンちゃんでしょ? コロちゃんって言うんだ。へー、可愛い」
「くーん」
白々しくふつうの犬のフリをするコロちゃん。
「どうなってるんだ?」
マロンちゃんはコロちゃんと目が合うと、急にあばれだしてキャンキャンとほえだした。
「あれ? どうしたのマロンちゃん」
マロンちゃんてば、きっとコロちゃんのことをあやしんでるんだわ!
「ごめんね、うちのマロンちゃんいつもは大人しいんだけど、今日はなんだかきげんが悪いみたい。それじゃあ」
手をふり去っていく蛍ちゃん。
私はほっと息をはき出した。
「どういうこと? コロちゃんは私たちにしか見えないんじゃなかったの?」
コロちゃんは小さくうなった。
「うーん、どうやらあの子、超能力者みたいだワン」
ええっ!?
「じゃ、じゃあ体育館のガラスを割ったのは、蛍ちゃん?」
ユナが考え出す。
「確かに、ガラスが割れた時、窓の一番近くには蛍ちゃんのいる五年一組がいた。でも、どうしてだ?」
「そうだね。どうして蛍ちゃんがガラスを割ったのかな。真面目ないい子なのに」
「ボクにも分からない」
私たちは、二人そろって「うーん」とうなった。
「とにかく、何とかしないと。今回はたまたま何も無かったけど、次に同じことがおきたら、ケガ人が出るかも」
「そうだね」
もし蛍ちゃんが犯人だとしたら、私たちが止めなきゃ。
でも、どうやって?
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