お母さんと一緒

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僕はいつも、あいつが家の中に入ってくる前に僕の背丈よりも低い机の下に逃げ込む。 あいつは玄関から入ってきて色んな部屋の扉を開き、タンスや押し入れを開けて何かを捜している。 お母さんとドラマを見ている時に映っていた『泥棒』に似ているなと思っていた。 僕が大人のあいつに力で敵うわけがない。 言葉も話せないし字も書けないから、この事をアスカに伝えられないんだ。 + …まただ。 夜になり、布団に入って眠っている時、またあいつがやって来た。 玄関先で音がする。 ガラガラと開く引き戸、廊下を歩く音。 足音は僕の眠っている和室の前でぴたりと止まり、障子を乱暴に開ける音がした。 机の下からは、歩き回るあいつの足だけが見える。 …怖いよ。 お願いだから早く出てってよ…!
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