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「ようこそいらっしゃいました」
さっきの男の人の声がして僕は目を開けた。
…僕の家の廊下じゃない。
そこにはキラキラした空間が広がっていた。
「ここは私の宝飾店…、アクセサリーを扱っているお店です。実はあなたに見て頂きたい商品がありまして」
店の男の人は、小さなケースの中からある物を取り出した。
それ、お母さんが大切にしていたブレスレットだ!
どうしてお兄さんが持ってるの?
「あなたのお母様は現在ご病気で、別の所におられます」
病気?お母さんは治るの?
「進行を遅らせる事はできますが、現代の医学で完治させる事は難しいでしょう」
よく分からないけれど、お母さんが治らないっていう事は何となく分かった。
「お母様はこのブレスレットをあなたに着けていてほしいと仰っています」
店の男の人は、泣きそうな顔をしている僕の前で片膝を付いてしゃがみ、僕にブレスレットを着け始めた。
「やはりあなたには大きすぎますね。長さを調節しなくては」
工夫して僕にブレスレットを着けてくれた後に、店の男の人は言った。
「あなたの願いは『言葉を話せるようになりたい』ですね?」
そうだよ。僕、アスカに伝えなきゃいけない。
あいつが家に入ってきてるって!
「それでは願いを叶えましょう。あなたは一日だけ言葉を話せるようになります」
一日だけ?
「そうです。一日の間にアスカさんに伝えたい事を全て伝えてください」
…分かった。
店の男の人は僕の言葉を聞くと優しく笑った。
「当店の商品は、きっとあなたのお役に立つ事でしょう」
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