第1章 真夏の光

2/4
前へ
/95ページ
次へ
 ――小学4年生の頃。  1年間になるかならないかの間だけ、近所に住んでいた友達がいた。  そいつは、近所の神社の本殿に倒れていたところを、神社の息子さんに見つかったらしい。  神社で暮らし始めたそいつと俺は、ある日、たまたま俺が神社に遊びに行った時に知り合った。  何か特別な話をしたわけじゃないし、していたとしても、内容はもう忘れた。  けれど、俺たちは、不思議とすぐに仲良くなっていたんだ。  毎日のように、町の中を走り回って遊んだ。  神社の近くにある洞窟へ行ったり、川へ水遊びに行ったり。  その頃は子どもだけで通っちゃいけないと言われていた暗渠(あんきょ)へ、こっそり行ってみたこともあった。  俺は、暇さえあれば、そいつを色んな場所へ連れ回した。  あいつは、嫌な顔一つしないで、むしろ楽しそうにしながら、俺に付き合ってくれた。  毎日が、楽しかった。  あいつと一緒にいられる日々が、すごく、楽しかった。 「なあ。俺たち、これからもずっと、友達でいような!」  ある日、俺は、山の上にある神社の境内で、あいつに小指を差し出した。  あいつは、ちょっとびっくりしてたみたいだけど、笑って、俺の小指に自分のそれをからめてくれた。  約束したんだ。  ずっと友達でいようなって。  ずっと一緒に遊ぼうなって。  ……だから、次の日。  あいつが突然いなくなったって聞いた時は、めちゃくちゃショックだった。  心のどこかにぽっかり穴が開いたみたいで、涙すらも出てこなかった。  何で?  どうして、何も言わないでいなくなっちまったんだ?  ただ、そんな疑問だけが、ぐるぐるぐるぐる、頭の中でうずまいていた。  ――あの日から、俺は、ずっと探している。 『ずっと、一緒だよ――翼』  神社の境内で、そう言いながら笑って、指切りげんまんをした友達。  ある日突然現れて、ある日突然消えてしまった、女の子。  笑顔がめちゃくちゃかわいくて、どこかはかなげな雰囲気をまとったその面影を、俺は、ずっと探している。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加