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背景に写った万国旗に、大勢の体操服姿の中学生。
これは、この前の体育祭のときの写真?
どうして由依さんが?
戸惑いながらも写真をもう一度よく見る。
画面の真ん中あたりに写っている女の子。これはわたしにちがいない。そして、そんなわたしの手を引いているのは、桜井くんだ。
あのとき――メガネが壊れてしまって途方に暮れるわたしを桜井くんが助けてくれたときのものだ。
「今ね、悠斗から送られてきたの」
スマホを操作してもう一度わたしたちに見せる。
『桜井くんといっしょにいるのってさ、ひょっとしてモデルの「瀬川のぞみ」じゃない?』
『うっそ、マジで。今まで全然気づかなかったんだけど。っていうかリアルでもこのふたりってデキてるの?』
『この女子って、普段めっちゃ地味なやつじゃん。これでモデルとか笑えるんだけど』
画面に並ぶ文字列に、血の気が一気に引いていく。
「これ……沢田先輩が書いた文……じゃないですよね?」
「当たり前じゃない! だれかが悠斗に教えてくれたみたいよ。こんなものが出回ってるけどいいのかって」
おそるおそるたずねるわたしに、由依さんが即座に反論した。
「今、悠斗が学校外にまで広まらないようにって手を打ってくれてるみたいだけど」
由依さんがため息まじりに言う。
「こうちゃんがついていながら、どうしてこんなことになってるの?」
「……悪かった。こんときはつい……」
桜井くんが、ぼそぼそと言い訳する。
「さ、桜井くんは悪くないんです。わたしがぼーっとしてたから……」
「書いた人にはそれほど悪意がなかったとしても、それによってだれかが追いつめられてしまうことだってある。こうちゃんならよくわかっているはずでしょ?」
「わかってるよ!」
桜井くんが声を荒げた。
「でも……こんときは亜希のことがどうしても放っておけなかったんだよ」
由依さんから目をそらして桜井くんがぼそぼそと言う。しばらくの間そんな桜井くんのことを少し驚いたような表情で見つめたあと、由依さんの口元が少しだけほころんだ。
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