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 清水がテープを超えた瞬間に走る、それは何度も何度も練習してきたパターンだった。僕はそれを守って走ればよかった。  しかし、プレッシャーに負けてしまった僕は、周りがスタートする気配に焦ってしまった。  清水がテープを超えるより早く、僕は走り出してしまった。 「待て!」  バトンを受け取る際に聞こえる声は「はい!」のはずだ。  背後から聞こえた声は違った。清水がバトンが届かないことを主張しているのだ。  バトンを受け取らずに走るわけにはいかない、僕は乗りかけたスピードを落とす。清水が「はい!」と叫び、なんとかバトンは通った。  しかし、もう勝負は決していた。  前方には各校の選手が見えた。バトンパスが乱れた僅かな間に僕達の学校は最下位に転落していたのだ。  僕は巻き返そうとしたが、焦りからフォームは崩れ、1人を抜くのがやっとだった。  4×100mリレーは7位に終わり、僕達の高校は県大会敗退が決まってしまった。  この結果、僕以外の仲間たちが引退となった。  僕のせいで負けてしまったというショックを引きずったまま挑んだ北信越大会個人100mでは、フライングにより失格となった。2年連続のインターハイに出場することはできなかった。  高校2年のときに残した全国3位という肩書きにおかげで神南大学に進むことはできた。しかし、何の結果も残せないまま大学3年の夏となり、僕はとうとう陸上部を休部したのだった。
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