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東京で暮らす由衣にとって、年に数回来るこの田舎は非日常であり、楽しいものだった。
従兄弟の中でも下の方である由衣は可愛がられたし、アイドルのような存在だった。祖父母も「由衣、由衣」と自分を取り合うように声をかけてくれていた。
けれど、妹たちが生まれてからそんなこともなくなってしまう。
妹たちが生まれたばかりの頃は、祖母が一年も泊りがけで家にいてくれた。ほとんど妹たちの世話につきっきりだった。その年は、この田舎には来られなかった。
次の年は、うろちょろしだした妹たちを引き連れてこの田舎にやって来た。お揃いの服を着て愛らしさを振りまく妹たちに、みんなは一気に虜になった。親戚中のアイドルが交代されたのだという事実は、このとき実感した。
その次の年も、今年も──由衣に注目が集まることは、ない。
誰もわたしなんて、見てないんだよ。
だってほら。家を抜け出しても、誰も気づいてないじゃない。
由衣はまた膝を抱えて丸まった。
見つけられるなら、見つけてみてよ。
どこか拗ねた寂しさを、温めるように、その丸めた体に閉じ込めた。
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