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四
レンタル彼氏は、女性が好みの男性を指名してデートをするサービスだった。デートをするといっても、ワクワクしたりドキドキしたりしたい人が多いわけではない。
どちらかというと、レンタル彼氏を利用する女性の大部分は、デートに楽しみ以外のものを求めていることが多かった。
虚妄でもいいから、ひと時のぬくもりが欲しい。異性だからこそ癒される傷がある。日常としがらみのない相手だからこそ、本音で話せる……。
理由は様々だが、その胸の中に暗い闇を抱えている人ばかりだ。
何人かの女性と会い、その誰もが特別暗い顔をしているわけではかなったが、その顔の下には身近な相手には明かせない本音が潜んでいた。
けれども、女性たちは決して自分からは口に出さない。
だからこそ、それに気づいてあげたり、本人すら分からない本音を引き出してあげると、その闇は少し薄らぐようだった。たかが数時間デートをしただけで相手の人生を変えるような力はないが、ほんのひと時でも自分と会っている時間が安らぎになるのであれば、精一杯応えたいと思うようになっていた。
女性と会うたびに、話を聞くたびに、心の奥底にある闇に触れるたびに、ひとりひとりの中から光となる希望を見出す――。
いつの日か、それが透の使命にもなっていた。女性たちの胸に深い闇が広がっていても、必ず光を灯すことができる。光は隠れてしまっているだけで、ひとりひとりの中に必ずあるのだ。透はその光を探すことに心を砕いた。
デートで得られる報酬は、エリート銀行マンの給料とは比べものにならなかった。金に執着していた以前の自分であったら、非効率的だと言って続けることはしなかっただろう。
女性を闇から解放するたびに、金では得られない充足感を抱く。そして、そのたびに透につきまとう真っ暗な闇も薄明るくなっているようだ。
誰の中にも光はある。もちろん、透の中にもだ。その光を探してくれるのは、今までデートをした女性たちなのかもしれない。
その後、透は勤めていた銀行を辞め、レンタル彼氏presageの運営に本腰を入れることになる。
それからの活躍は、そう、誰もが知るところだった――。
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