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確かに、私にとって優君は、命の恩人だし、初恋の相手だったのだろうと思う。
けどそれは子供の頃のことであって、今は違う。
私の心の中は、自分で想像していたよりも、窪塚のことでいっぱいになっているらしい。
そのことを窪塚にもわかっていて欲しい。
そのためには窪塚にちゃんとこの想いを伝えておかなければ。
ーー遠回りしちゃったけど、こうしてようやく互いの想いが通じ合えたんだから、大事にしたい。もう二度と、すれ違ったりしないようにーー。
そんな想いに突き動かされ、私は窪塚の胸にぎゅぎゅっと今一度しっかりと抱きつきながらに声を放っていた。
「そうとも知らずに私こそごめん。けど、優君は、初恋の相手だったからっていうよりは、命の恩人だったから今も心に残っているだけで。今は窪塚のことでいっぱいで、もう窪塚のことしか頭にないから安心してよね? 初デートで事故に遭遇したあの夜、医大生の頃からずっと窪塚のことが好きだったことにやっと気づいて、それで窪塚に傍にいて欲しかったの。それくらい窪塚のことが好き。大好き」
すると窪塚も私の想いに応えるようにして、ぎゅぎゅぎゅうっと掻き抱くようにして、さっきよりもしっかりとあたたかな胸に抱き寄せてくれる。
そこへ、続けざまに放たれた窪塚のいつになく真剣な声音が密着した互いの身体から想いと一緒に伝わってくる。
「俺は、もうずっと前から鈴のことしか目に入んねーよ。好きとか愛してるとか、もうそんな言葉では表し切れねーくらい好きで好きでどうしようもない。だから、鈴が俺と一緒にいることであの事故のことを思い出すって言うなら、潔く身を引くつもりでいる。そう伝えるつもりでいたんだ」
そこまで聞いた私は黙っていられず、ほとんど条件反射で大きな声を放ってしまったけれど。
「そんなのヤダッ!」
「俺も嫌だ。だからやめる。あんな事故のことなんて思い出す暇がないくらい幸せにしてみせる。だから俺と結婚を前提に付き合ってくれないか?」
すぐに窪塚が打ち消してくれて、改めて、今度こそちゃんと交際を申し込んでもくれて。
「あったり前でしょう。私だって窪塚に負けないくらい窪塚のこと好きなんだから、迷うわけない。いつか私のことお嫁にもらってくれないと許さないんだから。一生恨んでやるんだから」
感極まって、泣くのを必死にこらえていたせいで、やっぱり可愛げのないモノにはなってしまったけれど。
私は少しの躊躇いも迷いもなく、窪塚に向けて真っ直ぐに、嘘偽りない自分の想いをしっかりと返したのだった。
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